多種カチオン可視センサーのナノスケール“プール・オン・サーフェス”設計
2008.05.15
独立行政法人 物質・材料研究機構 材料ラボ
Sherif A. El-Safty
産業総合研究所 コンパクト化学プロセス研究センター
Adel A. Ismal, Hideyuki Matsunaga, Takaaki Hanaoka and Fujio Mizukami
「ビルディング・ブロック」法と名づけた可視ナノ化学センサーに関する手法を詳細に報告した論文が、NIMS材料ラボおよびAISTの研究者によって発表されました。
概要
有害金属の生体・健康毒性の問題に対してそれらの有害金属を検出するセンサーが求められています。特に近年、有害重金属は突然変異を引き起こし発癌性の可能性が指摘され、生物系に対して明らかに非常に高い毒性をもつため、微量な有害重金属を検出する必要性がますます高まっています。知られているかぎりでは、低コストの材料を用いて簡単に製作できてしかも有害な多数のカチオンに対し感度よく高い反応速度で検出できる可視ナノセンサーアレイの基本的な設計方法はこれまでには報告されていません。したがって、有害物質を検出する高い柔軟性と低設備コストの効率的な検出システムを開発するために光化学ナノセンサーのあらたな基本設計技術が求められています。
本論文では、「ビルディング・ブロック」法と名づけた可視ナノ化学センサーに関する簡便ではあるが基本的な手法を詳細に報告します。この設計手法は、通常用いられるシランカプリングあるいはチオールカプリングなどのカプリング剤を用いない3次元ナノ構造を形成させ、その上に移動度の異なる疎水性および親水性分子のレセプタを極めて堅牢な構造に配列させることで緻密な検出体パターンを形成させるものです。
本論文では、「ビルディング・ブロック」法と名づけた可視ナノ化学センサーに関する簡便ではあるが基本的な手法を詳細に報告します。この設計手法は、通常用いられるシランカプリングあるいはチオールカプリングなどのカプリング剤を用いない3次元ナノ構造を形成させ、その上に移動度の異なる疎水性および親水性分子のレセプタを極めて堅牢な構造に配列させることで緻密な検出体パターンを形成させるものです。
本手法の適用範囲の拡張として、キャリアとして微量レベルの有害検体を高感度で選択的に識別する種々の寸法形状のナノスケールの細孔および粒子形態を用いた試験も行いました。この手法の大きな特長は、被検出金属が迅速にインディケータ分子への効果的なフラックスを形成できる"プール・オン・サーフェス"状態をもたらす高い接触能力と柔軟性を持つ精緻に調整された表面プローブを作ることが出来るところにあります。この"プール・オン・サーフェス"検出システムは、Cr(VI)、Pb(II)、Co(II)、Pb(II)など多種の 金属イオンを効率的に高感度で検出しており、可視ナノセンサーとしての設計が正確であったことを示しています (図1) 。これらの発色成分はこれまで10-6~10-7 mol/dm3までの溶液中の金属イオンの検出には用いられていましたが、著者らが開発した設計の大きな特色は、初めてナノセンサーが高い反応速度 (秒オーダー) でサブピコモル (~10-11 mol/dm3) までの広い範囲のイオンを検出でき、再利用可能で選択的に高感度の識別可能な検出システムを創製することができたことです。
この論文に示した成果は、「Advanced Functional Materials」、2008年第10号に掲載予定であり、表紙の写真に選ばれています。また、研究記事はすでにAdvanced Functional Materialsのオンラインサイトに掲載されています。
この論文に示した成果は、「Advanced Functional Materials」、2008年第10号に掲載予定であり、表紙の写真に選ばれています。また、研究記事はすでにAdvanced Functional Materialsのオンラインサイトに掲載されています。