二重ナノリングの作製に世界で初めて成功
量子コンピュータ分野の新技術開拓へ道
2005.02.14
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMSのナノマテリアル研究所 ナノデバイスグループおよびナノ物性グループは、量子コンピュータに適用可能な新しいタイプの量子ドットである2重ナノリング構造を作製することに世界で初めて成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、ナノマテリアル研究所 (所長 : 青野 正和) のナノデバイスグループ小口 信行 ディレクター、間野 高明 研究員およびナノ物性グループ黒田 隆 主任研究員、迫田 和彰 主席研究員らは、量子コンピュータに適用可能な新しいタイプの量子ドットである2重ナノリング構造を作製することに世界で初めて成功した。
- 現状のコンピュータは、複数内蔵されているトランジスタ1つにつき情報を0か1に分解し、トランジスタ内部のスイッチをそれぞれの状態にして計算するという二進法で解答を導き出す仕組みになっているため、大きな数字の素因数分解などを行う際には甚大な時間がかかる。一方、量子コンピュータでは任意の割合で重ね合わせた「0」と「1」の状態を利用するため、複数の計算 (超並列計算) を同時に行う事ができ、そのスピードは通常のコンピュータで100年以上かかる計算が瞬時に行え、既存のコンピュータ概念を覆す可能性がある。
- 量子コンピュータの仕組みとして、量子ドット同士をその内部にある電子が相互作用する程度に近接配置させる必要があるが、超微細加工などによりナノの精度で配置を制御することが困難であり、現実的では無かった。また、自然に配置させる手法も考え出されているが、再現性に問題があった。
- 今回開発した手法では簡易に二つのナノリングを近接配置することができ、またそれぞれが独立した量子ドットとして動作することも確認した。また、二つのリング型量子ドット相互の距離も自由に制御することが可能であり、この成果により量子コンピュータ実現への研究が大きく進むものと期待される。
- 本成果は特許出願済みであり、米科学誌NANO LETTERSに近日掲載予定である。

図2 : 二重ナノリングの原子間力顕微鏡像。右図は左図の拡大図。非常にきれいな二重ナノリングの形成が観察される。

図3 : 二重ナノリングの高分解能走査型電子顕微鏡像。