携帯電話があっというまにバラバラに

使用済小型電子機器の分散処理に適した簡便な都市鉱石製造装置を開発

2009.12.17


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの原田 幸明 元素戦略センター長らは、(有)押鐘および(有)ナガオシステムと協力して、使用済小型電子機器を破壊して希少金属等を高濃度に含んだ「都市鉱石」を製造するための簡便な装置を開発した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) の 原田 幸明 元素戦略センター長らは、(有)押鐘および(有)ナガオシステムと協力して、使用済小型電子機器を破壊して希少金属等を高濃度に含んだ「都市鉱石」を製造するための簡便な装置を開発した。
  2. 開発した装置は、使用済小型電子機器の筐体を破壊・解体して希少金属を含んだ基板等を露出し分離可能にする「小型電子機器破解機」と、破解された小型電子機器のチップなどを効率的に粉化する「三次元ボールミル」の2つである。いずれも小型の装置であり、自治体などの分散型の処理に適している。これらによって、都市鉱石製造は実用化に向けて大きく前進したと考えられる。
  3. 「小型電子機器破解機」は、携帯電話機などの使用済小型電子機器にねじり力を与え、機器の構造的な強度がその部位ごとに異なることを利用して機器をバラバラに分解する装置である。筐体を破壊して内部を分解状態にすることから「破解機」と名付けた。
  4. 「小型電子機器破解機」は、数秒で携帯電話機をバラバラにすることができ、小型家電には不釣り合いな大型のクラッシャーや解体熟練者がいなくても、電子機器の主要部分を露出させることができる。そのためボールミル法などによる都市鉱石化だけでなく、「破解」後に人による識別を組み合わせて特定の部品を取り出すことも可能になる。
  5. 「三次元ボールミル」は、ジャイロ独楽 (こま) のように縦横二つの回転軸を有するボールミルである。二軸の回転を調整することにより容器の内部でボールがランダムな方向に運動するため、その内部に破解された電子機器を置くと、チップ等が効率的に離脱・粉化される。携帯電話機の場合では数分の処理で都市鉱石を製造できる。遊星ミルと比較すると二つの回転軸が中心で交差しているため高速の回転を安定して与えることができ、さらに容器の内部全体で被処理物がボールにより打撃を受けるため、高速かつ低エネルギー消費で基板からチップやメッキを離脱・粉砕できる。また、処理時間が短いため残されるプラスチックなどの片状物も損傷が少なく、プラスチックリサイクル等にかけやすい状態になる。
  6. 「破解機」および「三次元ボールミル」による都市鉱石化は、それぞれ(有)押鐘および(有)ナガオシステムとの連名で特許出願済であり、本成果の詳細は12月21日に開催されるエコマテリアルフォーラムの「都市鉱山研究会Ⅲ」で報告され、装置の実演も行われる。

「図1 小型電子機器破解機(サイズ感がわかるように台車に乗せて撮影)」の画像

図1 小型電子機器破解機(サイズ感がわかるように台車に乗せて撮影)


「図6 三次元ボールミル装置」の画像

図6 三次元ボールミル装置