ナノ細孔を持つフラーレン結晶

高効率の有機薄膜太陽電池や有機エレクトロニクス材料の開発に期待

2013.01.23


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ロック クマール スレスタMANA研究者と山内 悠輔独立研究者らは、無数のナノ細孔を持つフラーレン結晶を世界で初めて開発しました。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野正和) の超分子ユニット (ユニット長 : 有賀克彦) のロック クマール スレスタMANA研究者と同研究拠点山内 悠輔独立研究者らは、無数のナノ細孔を持つフラーレン結晶を世界で初めて開発しました。
  2. フラーレンは、グラフェン、カーボンナノチューブなどと並び、電子材料から医療材料まで幅広い応用が期待されているが、高い性能を出すために高表面積化などの構造を精密に制御することが課題である。例えば、その結晶中にナノスケールの細孔をあける研究はなく、表面積も1グラムあたり高々数平方メートル程度にすぎなかった。n型半導体であるフラーレン結晶の露出する表面積を大きくすると、p型半導体物質との有効な接触を通して高効率の太陽電池を開発できる可能性がある。
  3. 今回、異なる溶剤を用いてフラーレンの結晶を析出させるという簡単な手法で、無数のナノ細孔と従来材料よりも約10倍高い表面積を持つフラーレン結晶を作り出すことに成功した。溶媒の量を変化させることで、結晶中の細孔の数とその大きさを完全に制御することができ、多様なナノ構造を作り出せるところにも本手法の新規性・重要性があると言える。
  4. 今回開発したナノ細孔有するフラーレン材料は、電気化学的に活性であり、今後二次電池の炭素電極や、高いホール輸送性を活かしたキャパシタなどに用いることが可能である。また、新しい有機電子材料として電子回路部品、半導体素子などにも用いることができると考えられる。これまでのフラーレンの用途にない新たなマテリアルとしての可能性も十分に秘めている。
  5. この成果は、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」に近日掲載される予定である。

「プレス資料中の図1 : ナノ細孔有するフラーレン結晶の合成スキームとその電子顕微鏡像。」の画像

プレス資料中の図1 : ナノ細孔有するフラーレン結晶の合成スキームとその電子顕微鏡像。