埋もれた強磁性層からのスピン分解電子状態の検出に成功

スピントロニクスデバイス評価と新規材料設計への応用に期待

2014.04.02


独立行政法人 物質・材料研究機構
国立大学法人 東北大学金属材料研究所
国立大学法人 東北大学電気通信研究所

独立行政法人 物質・材料研究機構 (以下、NIMS) の上田茂典主任研究員、国立大学法人 東北大学金属材料研究所の水口将輝准教授、並びに、同大学電気通信研究所の白井正文教授らの研究グループは共同で、従来のスピン分解光電子分光法では検出が困難であった埋もれた強磁性層からのスピン分解電子状態の検出に成功しました。

概要

  1. NIMS (理事長 : 潮田資勝) の上田茂典主任研究員、国立大学法人 東北大学金属材料研究所 (所長 : 高梨弘毅) の水口将輝准教授、並びに、同大学電気通信研究所 (所長 : 大野英男) の白井正文教授らの研究グループは共同で、従来のスピン分解光電子分光法では検出が困難であった埋もれた強磁性層からのスピン分解電子状態の検出に成功しました。
  2. ハードディスク磁気記録媒体の記録情報読み出し用ヘッドなど、強磁性体を用いたデバイス開発において、非磁性体材料に埋もれた強磁性層のスピン分解電子状態の直接観測をすることは、強磁性体を用いたデバイス開発において必要不可欠です。しかしながらスピン分解電子状態を測定できる従来のスピン分解光電子分光法では、埋もれた強磁性層の情報を得ることが困難でした。
  3. 研究グループは、埋もれた強磁性層からの電子状態を測定するため、大型放射光施設SPring-8の高輝度硬X線を利用しました。硬X線を用いた光電子分光法では、埋もれた層からの電子状態を測定することができるためです。また、従来の方法とは異なるスピン検出方法を考案し、これを硬X線光電子分光法と組み合わせることによって検出効率を大きく向上させました。一例として、この硬X線スピン分解光電子分光法により、Au(金)薄膜層の下に埋もれたFeNi(鉄ニッケル)合金からなる強磁性層のスピン分解電子状態の検出に成功しました。
  4. 新しく考案した手法により、これまでの手法では直接的な観測が難しかった強磁性体と非磁性体の界面近傍での強磁性体のスピン分解電子状態を測定することが可能となります。強磁性体を用いたデバイス構造の特性評価と、強磁性層と非磁性層の接合界面近傍での強磁性層のスピン分解電子状態を比較、検討することで、デバイス特性の向上への寄与や新物質開発への応用展開が期待されます。
  5. 本成果は米国物理学協会速報誌Applied Physics Lettersに掲載予定です。

「本研究で行ったスピン分解光電子分光の実験配置の模式図。(a) 上から見た場合の実験配置。(b) X線入射方向から見た実験配置。本研究では、通常のスピン検出器を用いないので、2次元検出器を用いて高効率に測定を行うことができます。」の画像

本研究で行ったスピン分解光電子分光の実験配置の模式図。(a) 上から
見た場合の実験配置。(b) X線入射方向から見た実験配置。本研究では、通常の
スピン検出器を用いないので、2次元検出器を用いて高効率に測定を行うことが
できます。