第143回先端計測オープンセミナー
水素社会における材料パーフォーマンス研究
— 実機環境における耐熱材料の水素溶解・拡散 —
開催日: 2019.03.26 終了
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講演者
表題
ー実機環境における耐熱材料の水素溶解・拡散ー
講演要旨
H原子は、材料中で基礎的でかつ量子効果が顕著であり、筆者の個人的な研究の接点でも、金属HによるMott転移、NMRでのKnight/Chemical Shift, Si表面/非晶質Siの不動態化とStöbler Wronski効果による光劣化、照射損傷におけるH, He効果、中性子散乱によるD計測等々枚挙に暇がない。金材研時代には水素貯蔵合金の研究が主要プロジェクトの一つであった。近年では細野先生のHドーピングが興味深い。
水素社会がクローズアップされてきた直接の端緒は、燃料電池の飛躍的発展によると思われるが、この問題設定も歴史が長い。太陽エネルギーのような一次エネルギー源で発電して水の電気分解で水素製造し、燃料電池で電動機を駆動するのが本線であるが、それとは別に、かつて、高温ガス炉の1000℃の恒常的熱源を利用して炭化水素を水蒸気改質して水素製造し、直接製鉄を行うという計画があり、耐熱材料の環境効果、いまでいう「パーフォーマンス」研究が盛んに行われた。今や高温ガス炉自体は衰退してしまったが、高温の熱源の利用と材料の水素環境効果の研究は普遍的な問題を含んでいる。また、水蒸気改質による水素製造プロセスは今もほぼ同一であるし、低温における水素脆性も高温の水素溶解・拡散と繋がっている。また、低温であっても電位差があればHは金属中に侵入すること、あるいはH2Oが解離するとHが供給されることは留意点である。
そこで、筆者が昔経験した耐熱合金の通産省プロジェクト「高温還元ガス利用のよる直接還元製鉄技術の研究開発」における水素関連実験について、大がかりな水素実験の方法や、材料の環境効果・パーフォーマンスに重点を置いて話したい。実機の1000℃、10気圧までのH-C-O還元ガス環境は、一概に還元雰囲気とは言えず、実は酸化ポテンシャルや、脱炭・浸炭挙動も合金種や温度によって変わり、かつ熱平衡過程だけでなく、速度過程を追わなければならない。低酸化ポテンシャルはバルク内部を損なうことが多いので、MI的アプローチが望ましい。
Ni基耐熱合金の水素拡散・溶解の高温挙動は比較的単純であり、概ね化学組成との相関で説明できるが、表面酸化物層の影響は非常に大きい。逆に、水素透過のバリヤーとして機能すると言えるが、挙動は単純ではない。Heガス希釈効果等では環境ガス側の速度過程も問題になる。厳密な2層水素拡散モデルで解析すると表面層の水素透過特性が評価できるが雰囲気条件に応じて多様に変化する。
高温の場合は耐熱合金の耐酸化性自己:形成膜がそのまま水素保護膜として機能する。一方、低温においては水素溶解・拡散は大きくないが、Hの局所的な存在や、水素容器材料の薄肉化の要請を考えると、耐水素環境特性への要求は厳しくなるとみられる。そこで、低温においては水素保護膜を能動的に付けることが考えられるが、表面層は疲労亀裂初期生成に影響するので耐疲労特性の観点で設計する必要がある。
水素実験はそれほど危険ではないが、露点-70℃以下の純度管理、配管の微小リーク対策等、に工夫が要る。また、還元性混合ガスの実験は万全の対策と知識・経験が必要である。
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イベント・セミナーデータ
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第143回先端計測オープンセミナー
水素社会における材料パーフォーマンス研究
— 実機環境における耐熱材料の水素溶解・拡散 — - 会場
- 国立研究開発法人 物質・材料研究機構
桜地区小会議室 - 開催日: 時間
-
2019.03.26
13:30-14:30 - 参加料
- 無料
お問合わせ
-
国立研究開発法人 物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点運営室
Tel:029-859-2643/2839
Fax:029-859-2801
E-Mail: amc=ml.nims.go.jp([ = ] を [ @ ] にしてください)
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