つくばちびっ子博士 2010を開催

2010.08.24
(2010.08.30 更新)


2010年8月24日、NIMSはつくば市各機関で開催されている「つくばちびっ子博士」の参加機関として、3コースの小中学生参加型実験イベントを行いました。

「今年も多くの子供たちが参加しました」の画像

今年も多くの子供たちが参加しました


NIMSの青少年・児童向けアウトリーチ活動として、春の施設一般公開 (青少年特別行事) と人気を二分するこのイベントには、今年もたくさんの方からご応募をいただき、つくば市内からはもとより、遠くは岡山県から応募してくれた男の子もいました !
今回の実験コースは、「形状記憶合金について学ぼう」「金属の不思議」「とても冷たい世界のできごと  - 超伝導のはなし - 」の3コース。いずれも多くの参加者で賑やかな実験となりました。

形状記憶合金について学ぼう

最初のコース「形状記憶合金について学ぼう」では、温度によって形が変化する不思議な金属“形状記憶合金”を使用して、この金属が持つ「形状記憶」と「超弾性」という2つの性質について学ぶ実験を行いました。

「温風を当てるとバネが縮み、おもりを引っ張り上げる !」の画像

温風を当てるとバネが縮み、おもりを引っ張り上げる !


この形状記憶合金は、最近ではメガネのフレームなどにも使用されていて、結構身近な存在の金属です。

参加者は、この不思議な金属でできたマドラー (かきまぜ棒) をお湯や冷水に交互に浸して、温度により形状が変化する様子や、温度によるバネの伸び縮みでおもりが持ち上がる様子、また、ゆっくりなら強く曲げても形状が元に戻る、超弾性による復元力の強さなどを観察しました。

「左 : 冷却スプレーで案内標識を変える 右 : 形状記憶合金バネのおみやげもあります !」の画像

左 : 冷却スプレーで案内標識を変える 右 : 形状記憶合金バネのおみやげもあります !



形状記憶合金バネの温度による力の変化を利用した案内表示器具の前では、最初に冷却スプレーをバネに吹き付けて案内表示を変化させた後に、今度は息を直接吹いて暖め、表示をもとにもどす実験も楽しみました。さらに実験が終了した後には、参加者全員にパスポートへのスタンプ押しとともに、形状記憶合金バネと針金のプレゼントもありました。

金属の不思議

次のコース「金属の不思議」では、身近な金属のうち、ステンレス線・銅線・アルミ線・ピアノ線の4種類の線材について、物理的な刺激で性質がどのように変化するかを調べる実験が行われました。

「いろいろな金属で実験 !」の画像

いろいろな金属で実験 !


まず、金床の上で各線材を金槌で叩き、硬さがどのように変化したかの違いをみます。実験の結果、銅線は固くなり、ステンレス線は磁石にくっつくように変化 することが分かりました。次にそれらをランプの炎で直接熱して性質がどのように変化するのかを調べると、叩いて固くなった銅線は再び柔らかくなり、灼熱状 態からで急速に冷やしたピアノ線は脆くなるなど、物理的な力によって金属の性質が大きく変化することを発見・確認することができました。

「硬くて丈夫なピアノ線も、火で熱した後に水で急激に冷ますと…子供の力でも簡単に折ることができるように !」の画像

硬くて丈夫なピアノ線も、火で熱した後に水で急激に冷ますと…子供の力でも簡単に折ることができるように !



とても冷たい世界のできごと  - 超伝導のはなし -

最後のコースの「とても冷たい世界のできごと - 超伝導のはなし - 」では、前半に液体窒素を用いて-196℃の極低温環境下で、物の性質がどのように変化するかを観察し、さらに、後半は極低温下で特異な性質を現す“超伝導物質”についての実験を行いました。

「極低温に冷やした花を手で叩くと、脆く崩れる」の画像

極低温に冷やした花を手で叩くと、脆く崩れる


「左 : ボールも壊れる 右 : 炭酸ガスは固体に変化」の画像

左 : ボールも壊れる 右 : 炭酸ガスは固体に変化


前半の実験により、-196℃の環境下では、花などの水分を持つ物体は、凍結して固くなることが分かりました (バナナに至っては、鉄釘を板に打ち付けられるほど固くなります ! ) 。その一方で、凍った花を手で叩くと崩れ落ちる様子や、液体窒素に漬けたゴムボールを落とすと割れる様子から、脆く壊れやすくなる事も分かりました。さらに鉄は冷やすと縮んで脆くなることも実験で確認することができました。

次に、金属や半導体と呼ばれる物質に電流を流して電球を灯す実験を行いました。実験を通して、温度が低くなると電流の流れやすさが変わり、“超伝導物質” を電線に用いると、極低温環境下では電気抵抗がゼロになること、また金属の場合と比べて電球が非常に明るくなることを体験しました。

「超伝導現象を実験で体験左 : 浮遊する超伝導体。箸で突くとスムーズに動く中 : マイスナー効果とピン止め効果で逆さにしても落ちない右 : 超伝導体の回転を利用した発電装置で微弱な電流を発生させることができる」の画像

超伝導現象を実験で体験
左 : 浮遊する超伝導体。箸で突くとスムーズに動く
中 : マイスナー効果とピン止め効果で逆さにしても落ちない
右 : 超伝導体の回転を利用した発電装置で微弱な電流を発生させることができる



また、超伝導物質が固定され、宙に浮いて逆さまにしても落ちない、超伝導体特有の性質を利用した実験をおこないました。超伝導物質がマイスナー効果により磁石の上に浮遊したり、ピン止め効果により逆さまにしても落ちない現象は、参加者の興味を大きくひき、実験終了後の自由時間もその効果を実際に体験しようと、多くの参加者が試していました。

おわりに

関連画像
NIMSでは、全国の小中学生に物質や材料の不思議について体験してもらい、科学への興味を少しでも多く持ってもらうために、この「つくばちびっ子博士」に毎年参加しています。

来年も参加を予定しておりますので、今回惜しくも抽選から外れてしまったみなさまも、今回ご参加いただいたみなさまも、どうぞふるってご応募ください。