サマー・サイエンスキャンプ2011を開催
2011.07.26-28
(2011.08.24 更新)
2011年7月26日~28日の3日間に、NIMSでは「金属の強さを調べよう ! ~鉄を冷やすとどうなるのか?」をテーマに18名の高校生を迎えて「サマー・サイエンスキャンプ 2011」を実施しました。
サマー・サイエンスキャンプは、科学技術振興機構が主催する、全国の中高生を対象とした2泊3日の教育プログラムで、NIMSでは、第一線の研究者が、未来の科学者や技術者を目指す学生に対して、物質や材料について本格的な実験を通して指導を行います。毎年、意欲のある学生から多くの応募があり、今年も18名の学生がNIMSにやってきました。
初日は顔合せをかねて
お互いに初めて会うこともあって少し緊張気味の学生たち。でも、初日は簡単な実験やピュータークラフト、懇親会を通して、だんだんと仲間意識が芽生えます。
金属の不思議
学生たちは、開講式とオリエンテーションで自己紹介をした後に、さっそく「金属の不思議」と題した実験を行いました。銅線、ステンレス線、ピアノ線、形状記憶合金など、何種類かの金属線材を叩いたり熱したりすることで、線材の性質がどのように変化するのかを調べます。学生たちは、ハンマーや卓上ガスバーナーなど、学校の実験でも使いそうな道具を使用するこの実験を通して、少しずつ雰囲気に慣れていきました。
ピュータークラフト/懇親会
実験の後は、「ピュータークラフト」を楽しみました。ピュータークラフトは、春のNIMS一般公開 (青少年特別企画) でも行われるNIMSの名物イベントで、彫刻刀でレンガに好きな模様を彫り、溶かしたスズを流し込んで冷やせばメダルができます。学生たちは思い思いの形のメダルを作りました。その後の懇親会では、食事をしながら、さらに打ち解けた様子でした。
二日目は本格的な実験を通して材料の基礎を学ぶ
お互いに慣れた二日目からは、これまでに使用したことのない試験機や電子顕微鏡を使って、いよいよ本格的な実験を行います。
シャルピー衝撃試験/引張試験
いろいろな材料の強さを調べるため、大きな力で材料が切れるまで引っ張る「材料引張試験」や「低温脆性 (ていおんぜいせい) 」を調べる「シャルピー衝撃試験」を行いました。
低温脆性とは、タイタニック号の事故原因のひとつと言われている性質です。シャルピー衝撃試験は、金属試験片に対して、大きなカマのような試験機のバーを一定の高さから振り下ろして衝撃荷重を加え、その後、どの程度までバーが振り上がるかで、金属試験片のねばり強さを確認することができる実験です。これらの実験を通して、金属の温度や合金の組成、そして結晶粒の大小により、粘り強さが変化することが分かりました。
低温脆性とは、タイタニック号の事故原因のひとつと言われている性質です。シャルピー衝撃試験は、金属試験片に対して、大きなカマのような試験機のバーを一定の高さから振り下ろして衝撃荷重を加え、その後、どの程度までバーが振り上がるかで、金属試験片のねばり強さを確認することができる実験です。これらの実験を通して、金属の温度や合金の組成、そして結晶粒の大小により、粘り強さが変化することが分かりました。
電子顕微鏡による破断面の観察
その後、透過型および走査型の2種類の電子顕微鏡の構造を学び、実際に走査型電子顕微鏡を用いて像観察や組成分析を行いました。学校では見る事のできない、電子顕微鏡から見えてくる世界は、心に残るものになったことでしょう。
最終日の三日目は、施設見学とまとめの発表
最終日は、施設見学でナノテクノロジー施設を体験し、その後、二日間で行った実験から得られた結果をまとめて、プレゼンテーションを行いました。
施設見学
高度な材料技術には、ナノテクノロジーにより原子スケールで行う研究が欠かせません。最終日には、これを体験するために、クリーンルームを用いたリソグラフィー実習、また透過型電子顕微鏡を用いた原子界面の観察を行いました。
実験のまとめ/修了証
毎年、サイエンスキャンプの最終日には、実験を通して得られた結果をまとめてもらい、グループごとにプレゼンテーションを行ってもらいます。プレゼンテーションが初めてという学生が多く、緊張もしますが、得られた結果をもとに成果や考察を発表することも大事な仕事です。無事に全員の発表が終わると、参加者全員に修了証が贈られ、今年のサイエンスキャンプは終了しました。
未来の研究者として
NIMSでは、サマー・サイエンスキャンプを通して高校生たちが実際に金属に触れ、そこに秘められた様々な不思議を体験して学ぶことで、身の回りにある道具や構造物に対する関心を高め、科学への興味を深めて将来新しいものを作り出す研究者を育むきっかけになることを願っています。