“失敗例”を含む約1000の超伝導物質探索の結果を初公開
2015.05.18
室町英治理事、熊倉浩明NIMS招聘研究員は、東京工業大学の細野秀雄教授らとともに、超伝導物質の探索に関して、超伝導特性を示さなかった“失敗例”を含む広範な共同研究の結果を、NIMSが刊行支援するオープンアクセス誌Science and Technology of Advanced Materials (STAM) 誌で公開しました。
通常の研究論文では、 “成功例”のみが報告され、超伝導特性を示さなかった物質の情報は共有されないため、別の研究チームで同じ失敗が繰り返される可能性があります。しかし今回のレビュー論文は、新たに発見された超伝導体とともに、超伝導が認められなかった約700種の物質を含む1,000種ものリストが収録されています。
「これはおそらく、検討したが超伝導を示さなかった物質のリストを含む初の論文です。超伝導の研究者にとって貴重なデータとなるはずです」と、今回の論文の筆頭著者である細野教授は述べています。「世界中で無駄な努力を避け、超伝導分野の研究を推進したい」という研究チームの総意のもと、広くデータを共有するために、オープンアクセス誌であるSTAM誌上での公開にいたりました。
本研究は、最先端研究開発支援 (FIRST) プログラムのもとで行われた4年間の研究成果をまとめたものです。
[1] STAM誌に公開された論文
細野秀雄,田辺圭一,室町英治,陰山洋,山中昭司,熊倉浩明,野原実,平松 秀典,藤津悟 : Sci. Technol. Adv. Mater. Vol. 16 (2015) p. 033503
(http://dx.doi.org/10.1088/1468-6996/16/3/033503)[2] STAM誌ポータルサイト「注目の論文」での本論文の紹介記事
(http://e-materials.net/stam/pickuppaper/detail.html?pp_id=48)
*STAM誌は、日本の材料研究機関NIMS (国立開発法人物質・材料研究機構) とスイスの研究機関Empaが刊行支援をするオープンアクセスジャーナルです。
http://iopscience.iop.org/1468-6996/
[3] 本稿はオープンアクセス論文としてSTAM誌から閲覧できますが、物理学プレプリントサーバarXivでも著者版を公開しています。
(http://arxiv.org/abs/1505.02240)