電気泳動法でカーボンナノチューブAFM探針の作製に成功
製造速度、再現性および分解能を飛躍的に向上
2005.01.04
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMSの材料研究所は、アメリカ・ノースカロライナ大学との共同研究により、電気泳動法によるカーボンナノチューブチップを用いて高分解能を持つ原子間力走査型顕微鏡 (AFM) 用探針を製作することに成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 材料研究所 (所長 : 野田 哲二) の唐 捷 (とう しょう) 主幹研究員は、アメリカ・ノースカロライナ大学 (ノースカロライナ州) のオット・ジョウ教授グループとの共同研究により、電気泳動法によるカーボンナノチューブチップを用いて高分解能を持つ原子間力走査型顕微鏡 (AFM) 用探針を製作することに成功した。
- カーボンナノチューブは直径が約1ナノメートル (nm : ナノは10億分の1) 、長さが約1~10マイクロメートル (μm : マイクロは100万分の1) という極微細の円筒形物質 (筒状炭素分子) であり、高い弾力性、破損しにくいことから高分解能かつ長寿命のリソグラフィプローブとして期待されている。
- カーボンナノチューブの研究は今まで様々な形で行われていたが、形状制御の困難さ、再現性の低さ、また作成プロセスの難解さから、簡易な方法で再現性良く、形状制御の容易な作製法の開発が待ち望まれていた。
- 今回開発した手法によれば、従来の電子顕微鏡中での操作と異なり溶媒は水、温度は室温という極めて通常の環境下においてほぼ100%の確率でカーボンナノチューブプローブが形成され、またプローブを付着させたシリコンチップにほぼ平行に配向できるため水平方向の分解能が向上し、さらに長さもシリコンチップの引っ張り速度等を変化させることで容易に制御可能である等、今までの諸問題を完全に解決可能である。
- 本成果により、新しいナノ構造の作製・解析を行うための手法を提供することができ、また高分解能であるという特性を活かしてナノ分析デバイス実現に向けての研究開発を進めるとともに小型のX線源など生物医療分野での応用展開を目指す。なお、本手法は必要に応じて様々な金属・ナノチューブプローブを容易に作製することが可能であり、大量生産にも向いていることからすでに企業に使用され、商品化も始められようとしている。
- 本研究成果の一部は既に米国特許を出願しており、近日英文誌「ナノレター」で発表される予定である。