電気伝導率の高いカーボンナノチューブの簡便な合成法の発見
ナノ配線や透明電極への応用を目指して
2007.03.15
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMSナノ有機センターの樋口 昌芳 主幹研究員らは、金属イオンと有機分子が数珠つなぎになった新型高分子の合成に成功し、この高分子がマルチカラーを表示可能な優れたエレクトロクロミック材料となることを発見した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) ナノシステム機能センター (センター長 : 青野 正和) ナノフロンティア材料グループの高野 義彦 グループリーダーと石井 聡 NIMSポスドク研究員は、高い電気伝導率を示すカーボンナノチューブを簡単に作製することが可能な合成法を考案した。
- カーボンナノチューブは、細長く丈夫であることから、ナノ配線や透明電極、電子放出材料など様々な分野での応用が期待されている。しかし、カーボンナノチューブは巻き方 (カイラリティー) により、金属的伝導を示したり半導体になったりとその性質は大きく変化する。そのため、カイラリティー制御などが試みられているが、未だに成功していない。カーボンナノチューブをナノ配線などに用いるためには、カイラリティーによらない高い電気伝導率が不可欠であり、その作製法が待ち望まれていた。
- 当グループでは、簡便な気相成長法を用い合成時にホウ素を添加することによって、電気伝導率の高いカーボンナノチューブの作製に成功した。電気伝導率は、電子線リソグラフィーを用いて、1本のカーボンナノチューブに4端子を設置し評価した。ホウ素を添加したカーボンナノチューブは電気伝導率が高く、一般の多層カーボンナノチューブは低温で電気伝導率が低下し絶縁体になることが多いのに対し、本研究のカーボンナノチューブは、極低温(-272.5℃)まで高い電気伝導率を保つことが分かった。
- また、ホウ素濃度は、原料のメタノールに添加するホウ酸の濃度により制御可能であり、様々な特性のカーボンナノチューブを作り分けることができる。
- 本発見は、樹脂に導電性カーボンナノチューブを添加して作製する透明電極や伝導性フィルムを始め、将来のLSIのナノ配線、カーボンナノチューブFET、 SPMの探針、電子放出デバイス、燃料電池などへの応用が考えられる。
- 本成果は、3月18日からの日本物理学会で発表の予定である。