キトサンを用いた細胞培養基材のサンプル提供開始

物材機構と都神経研・北海道曹達・プライマリーセルによる共同開発品

2008.02.04


独立行政法人物質・材料研究機構
財団法人東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所
北海道曹達株式会社
株式会社プライマリーセル
ノーステック財団

NIMSナノ有機センターは、炭素系ナノ材料のフラーレンで表面にナノサイズのフレーク構造を持つ微粒子を作製し、これを基板上に敷き詰めた薄膜がハスの葉の様に水をはじく超撥水の機能を発現することを発見した。

概要

独立行政法人物質・材料研究機構 (茨城県つくば市、岸 輝雄理事長) と財団法人東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所 (東京都府中市) 、北海道曹達株式会社 (北海道苫小牧市) 、株式会社プライマリーセル (北海道札幌市) 、ノーステック財団 (北海道札幌市、正式名 : 財団法人北海道科学技術総合振興センター) は、キトサンナノ繊維を用いた細胞培養基材の開発に成功し、医療・バイオ分野の研究者、医薬・化粧品メーカー等に向けて、サンプルの提供を開始することになりました。

この細胞培養基材は、カニの外骨格から得られるキチンを処理し得られたキトサンから調製した数百ナノメートル径のナノ繊維を、24・ 48・96孔ウエル培養プレート、13mmφ等のガラス製カバースリップの上に固定化したもので、神経細胞、脂肪細胞等の接着・培養に適していることが確かめられています。

研究開発の内容

北海道曹達が基材の開発・製造を担当し、物質・材料研究機構と都神経研が各種細胞の培養実験、プライマリーセルが培養キットにして製品化するための評価を行い、ノーステック財団が事務局を務めるという産学官連携の体制で研究開発を進めてきました。

この結果、

  1. 特別な処理が不要で取り扱いの容易な細胞培養基材の開発に成功。
  2. 開発した細胞培養基材は、既存製品よりも神経細胞の接着・成長が良好で、活発な神経の伸長が見られる。
  3. 特に脂肪細胞は、長期間の接着が可能となり、脂肪細胞の培養に有効であることからメタボリック関連の研究にも応用の可能性がある。
  4. 既存製品では培養がむずかしい後根神経節移植片の培養が可能。
という既存製品を上回る成果を得ることができました。

その一例として、神経細胞では一般的な細胞だけでなく、比較的培養の難しいとされる成体マウス後根神経節移植片でも良好に培養することができ、その性能は、類似の機能性培養基材であるコラーゲンタイプIやポリ-L-リジンをコートしたものに比べ、後根神経節ニューロンの突起伸長が非常に良好でした。

また、脂肪蓄積が進むと細胞が剥離しやすいラット初代内臓脂肪細胞の培養において、脂肪蓄積後も長期間培養することに成功するとともに、基材への細胞接着も良好でした。

そこで、本基材の有効性を知って頂く為に、医療・バイオ分野の研究者、医薬・化粧品メーカー、試験研究機関など多くの方々に、本基材のサンプルを以下の条件で無償提供することにいたしました。

提供条件

  1. 使用目的、結果の報告義務
  2. 機密保持などを記した簡単な確認書の作成
  3. 無償提供期間は2008年2月から8月までの予定

キトサンナノ繊維培養基材開発の経過

本基材は、経済産業省・平成17-18年度地域新生コンソーシアム研究開発事業「キトサンナノ繊維を用いた神経再生促進型マトリックスの開発」により試作品雛形を開発し、その後、文部科学省の委託事業「先端研究施設共用イノベーション創出事業“ナノテクノロジー・ネットーワーク”」の研究支援を活用し、培養基材としての評価及びその評価に基づく改良を行い、今回のサンプル提供に至りました。

「写真1: サンプル提供されるキトサンナノ繊維を用いた細胞培養基材のSEM画像」の画像

写真1: サンプル提供されるキトサンナノ繊維を用いた細胞培養基材のSEM画像