白金ナノ金平糖 : 微細構造を持つ白金ナノ粒子の開発に成功
金属ナノ構造への新たな挑戦
2009.06.23
独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人科学技術振興機構
NIMSとJSTは、ナノスケールの微細な凹凸を白金 (Pt) ナノ粒子表面上に作製し、大きい表面積を有する金平糖状の白金ナノ粒子の合成に成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄、以下NIMS) と独立行政法人 科学技術振興機構 (理事長 : 北澤 宏一、以下JST) は、ナノスケールの微細な凹凸を白金 (Pt) ナノ粒子表面上に作製し、大きい表面積を有する金平糖状の白金ナノ粒子の合成に成功した。この研究成果は、NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の山内 悠輔 独立研究者らの研究グループによって得られた。
- 白金は、触媒として高い活性を持つことが知られており、電池などの電極や工業触媒 (自動車の場合は排気ガスの浄化触媒) として広く用いられている。白金の表面積を大きくすると、露出している白金の表面積が増加するため、触媒機能が非常に活性化する。そのため、これまでにもナノ粒子、ナノファイバー、ナノチューブ、ナノ (メソ) ポーラス物質などの様々な白金ナノ材料の合成法が盛んに研究されてきた。また、希少元素の使用量を減らす最近の社会の動きからも、少量の白金で、更に大きい表面積を実現し、高い触媒活性を示す新たな白金ナノ材料の開発が求められている。
- 本研究では、界面活性剤、白金イオン種、溶媒からなる水溶液に還元剤を添加し、金平糖状の形状を有する白金ナノ粒子を高速で合成する。界面活性剤分子と白金との相互作用を利用し、白金ナノ粒子の表面にナノレベルの凹凸を作り出す。更に、還元剤の量を制御することにより、均一な粒子径を実現し、ナノ粒子が完全に分散した溶液としても得ることができる。表面積は、55m2/g以上であり、今までに報告されているすべての白金ナノ材料中で最も大きい表面積を達成した。また、熱的安定性も高い
- 本成果はJST 戦略的創造研究推進事業 個人型研究 (さきがけ) 「ナノシステムと機能創発」領域 (研究総括 : 長田 義仁、理化学研究所基幹研究所 副所長) における研究課題「次世代磁気記録媒体に向けたナノ構造制御システムの構築」 (研究代表者 : 山内 悠輔) の一環として得られた。なお、本研究成果は、Journal of the American Chemical Society誌 (アメリカ化学会発行) に近日中に掲載される予定である。 (論文 : Liang Wang and Yusuke Yamauchi*, “Block Copolymer Mediated Synthesis of Dendritic Platinum Nanoparticles”, JACS, in press.)