かごの中の金の卵 :
ナノ空間の金粒子が触媒技術に新たな道を拓く
2010.07.12
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)のアジャヤン・ビヌ (Ajayan Vinu) 独立研究者らは、安定化剤や還元剤を使うことなく精密に大きさが揃った金などの金属ナノ粒子を合成する手法を世界ではじめて確立した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の アジャヤン・ビヌ (Ajayan Vinu) 独立研究者らは、安定化剤や還元剤を使うことなく精密に大きさが揃った金などの金属ナノ粒子を合成する手法を世界ではじめて確立した。
- 金ナノ粒子には、燃料電池、各種触媒、物質分離、さらにはエレクトロニクスから化粧品にいたるまで多岐にわたる応用が期待されている。その各特性はその粒径によって決められるので、簡便な粒径制御の方法の確立は非常に重要である。
- 本研究グループでは、独自開発したナノポーラス窒化炭素 (MCN) のナノメートルサイズでの大きさが厳密に定められた空間の内部で、金ナノ粒子を成長させ厳密に決まった大きさの粒子を作製した。
- ナノポーラス内部にあるアミノ基が安定化剤と還元剤 (前駆体から金を作る働きを持つ) の役割を果たし、特別な化学物質を使わずともナノ粒子の合成が自然に起こる。
- 実証として、医薬品であるプロパルギルアミンという物質合成の触媒として機能することが確認された。ナノポーラスに固定化された金ナノ粒子は凝集して活性を失うことなく、また簡単に洗うだけで、何回でも繰り返しリサイクル利用することもできる。
- これと同じ方法論により、様々な種類の金属ナノ粒子を、安価に大量生産することが可能となる。本技術は、触媒開発にとどまらず、物質分離、水素貯蔵、ドラッグデリバリー、燃料電池用の電極材料において多大な貢献をなすものと期待される。
- 本研究成果は、科学誌 Angewandte Chemie International Edition に近日オンライン公開される予定である。