世界最高性能の薄膜コンデンサ素子を開発

ナノの高誘電体シートで素子の小型化と大容量化を同時実現

2010.08.24


独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人科学技術振興機構

分子レベルの薄さ (厚み : 1.5ナノメートル) の新しい高誘電体シートを発見し、ビーカーを使ったナノテクで世界最高性能の薄膜コンデンサ素子の作製に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の長田 実 MANA研究者、佐々木 高義 主任研究者らの研究グループは、分子レベルの薄さ (厚み : 1.5ナノメートル) の新しい高誘電体1)シートを発見し、ビーカーを使ったナノテクで世界最高性能の薄膜コンデンサ2)素子の作製に成功した。
  2. コンデンサは、電圧をかけると、その電圧に応じて電荷を蓄える機能を持った電子部品で、携帯電話、パソコンなど、あらゆる電子機器の心臓部で活躍している。近年の携帯電話、パソコンの小型化、高機能化に伴い、コンデンサの需要も急速に伸びており、小型で大容量、高機能のコンデンサの開発が重要となっている。現在、コンデンサには、チタン酸バリウム3)などの高誘電体セラミックスから作製した誘電体膜が使われており、誘電体膜を薄膜化することで、素子の小型化、高性能化 (大容量化) を実現してきた。しかし、現在の高誘電体膜には、製造プロセスの加工限界や、ナノサイズに薄膜化すると、誘電率が低下するという動作限界の問題があり、これがさらなる小型化、高性能化を目指す上で大きな障害となっていた。
  3. 本研究グループでは、小型、高性能のコンデンサ素子を実現する新しい手法として、ナノレベルでも機能する高誘電体の探索を行い、今回、従来の高誘電体膜の加工限界や動作限界を打ち破る、膜厚10ナノメートル以下で機能する極薄の高誘電体シート (ペロブスカイトナノシート4) ) を発見した。さらに、環境にやさしい水溶液プロセスを用いて、ナノシートの積み木細工を行い、膜厚10ナノメートル以下で世界最高の誘電率 (200以上)を持つ薄膜コンデンサ素子の作製に成功した。これにより、コンデンサ素子のさらなる小型化と大容量化が可能となり、次世代の大容量コンデンサ素子開発への新しい道が開けた。
  4. 本研究は、独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) 「ナノ科学を基盤とした革新的製造技術の創成」研究領域 (研究総括 : 堀池靖浩) における研究課題「無機ナノシートを用いた次世代エレクトロニクス用ナノ材料/製造プロセスの開発」 (研究代表者 : 佐々木高義) の一環として行われたもので、ACS NANO誌 (米国化学会発行) のオンライン速報版に近日中に掲載される予定である。

「プレス資料中の図1 (左) 現在の積層セラミックコンデンサの技術。 (右) 今回発見した高誘電体シート (ペロブスカイトナノシート) で解決した技術課題をまとめた図。」の画像

プレス資料中の図1
(左) 現在の積層セラミックコンデンサの技術。 (右) 今回発見した高誘電体シート (ペロブスカイトナノシート) で解決した技術課題をまとめた図。



掲載予定の論文タイトル

分子レベルの薄さのペロブスカイトナノシートにおける頑丈な高誘電特性
Robust High-k Response in Molecularly Thin Perovskite Nanosheets