世界初 ! ダイヤモンド・ナノマシンスイッチの開発に成功
ダイヤモンドの新しい機能性、ナノ/マイクロマシンへ向けて
2010.10.14
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS センサ材料センター廖 梅勇主任研究員らは、ナノ/マイクロマシン技術を用いた単結晶ダイヤモンドのナノ可動構造体(カンチレバーおよびブリッジ)の作製に成功するとともに、単結晶ダイヤモンドのナノマシンスイッチの開発に世界で初めて成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) センサ材料センター (センター長 : 羽田 肇) 廖 梅勇主任研究員らは、ナノ/マイクロマシン技術1) を用いた単結晶ダイヤモンドのナノ可動構造体(カンチレバーおよびブリッジ)の作製に成功するとともに、単結晶ダイヤモンドのナノマシンスイッチ2) の開発に世界で初めて成功した。
- ナノマシンスイッチは、既存の半導体デバイスに比べて、高機能化、省エネルギー化を可能とする技術である。従来のナノ/マイクロマシンスイッチの多くは、シリコンや金属材料を用いて作製されているため、機械的、化学的および熱的な安定性が悪く、信頼性及び耐久性に劣る欠点がある。ダイヤモンドは、弾性定数、機械的硬度、熱伝導率、絶縁性など物質中で最高値を有する材料であり、高機能・高信頼性なナノマシンスイッチの実現が期待できる。しかしながら、単結晶ダイヤモンドの可動構造体の作製が難しく、単結晶ダイヤモンド・ナノ/マイクロマシン開発は難しい課題であった。
- 当グループは、単結晶ダイヤモンド基板に高エネルギーイオンを注入することによって局所的にグラファイト犠牲層3) を形成した後、マイクロ波プラズマ気相成長法4) によって導電性を持つダイヤモンド薄膜を成長させ、その後グラファイト犠牲層を除去することによって、可動構造体を作製するプロセスを開発した。更にこの技術を発展させ、3つの電極より構成されるトランジスタ状構造からなるナノマシンスイッチデバイスを作製することに初めて成功した。
- 開発されたダイヤモンド・ナノマシンスイッチのリーク電流はかなり低く、消費電力は10ピコワット(pW)以下である。また、表面固着がほとんど観測されず、高い再現性および高い信頼性を実現する。更に、ダイヤモンド・ナノマシンスイッチは高温環境 (250℃) で安定に動作することも確認した。カンチレバー可動構造体のヤング率5) は1100GPaと測定され、ダイヤモンドバルク単結晶の値に近く、ギガヘルツの高速スイッチ操作を期待することができる。
- ダイヤモンド・ナノマシンスイッチは、従来のナノ/マイクロマシンスイッチに較べ、信頼性、寿命、速度、出力などの機能の大幅な向上、また、次世代高周波無線通信および耐環境デバイスなどの分野での応用が期待される。更に、本研究成果は、ダイヤモンドの新しい機能性分野ナノ/マイクロマシンの基盤技術を確立するともに、化学、物理、および機械的センサへの展開を開拓することができる。