物質の核生成に新たな理論を発見
形状や体積が変化する現象の解明に貢献
2012.02.22
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS 理論計算科学ユニットの西野 正理主任研究員らは、物質の状態が変化するきっかけとなる現象 (核生成現象) について、これまで知られていない新たな過程があることと、それを説明する理論を発見した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 理論計算科学ユニットの西野 正理主任研究員らは、物質の状態が変化するきっかけとなる現象 (核生成現象) について、これまで知られていない新たな過程があることと、それを説明する理論を発見した。
- 核生成は、エレクトロニクス技術から気象学におよぶ広範囲な研究分野において重要なテーマである。伝統的に、たかだかナノメートル程の微視的なスケールで起こる一連の過程だと考えられており、実際に微視的な核生成のみが知られている。しかし、今回の研究では、弾性ひずみにより遠く離れた分子にまで分子間相互作用がおよぶ系においては、臨界核の大きさが全系の大きさに比例する為に、巨視的な過程になり得ることを明らかにした。
- 核生成理論においては、その表面 (界面) と内部の (自由) エネルギーのバランスで決まるある特定の大きさを持つ微視的な臨界核が考慮される。しかし、今回我々は、結晶を構成する分子が大きさの異なる双安定状態を持つことで弾性ひずみが生じるスピンクロスオーバー系のモデルを解析し、弾性ひずみにより遠く離れた分子にまで分子間相互作用がおよぶ系においては、核の臨界的な大きさはある特定の値を持つのではなく、全系の大きさに相対的なものであることを明らかにした。ここでは、核生成は巨視的な過程になることができ、「巨視的核生成」という新しい概念が得られる。
- 本研究での成果は、これまでの核生成理論に新たな展開を与える。物質設計においては、系の大きさを調整することで準安定状態の強さやヒステリシスループの幅を制御する (著しく変える) 原理が与えられる。さらに、マルテンサイト変態、磁歪、ヤーン・テラー歪みによる構造相転移などの未解明な機構にたいしても有用な知見を与えると考えられる。
- 本研究成果は、ネイチャー・パブリッシング・グループのオープンアクセスジャーナルScientific Reportsオンライン版にて平成23年11月22日に公開された。そのアブストラクトの和訳が、日本語ウェブサイトに「注目の論文」として平成24年1月23日に掲載された。