アルミ陽極酸化膜を用いて、抵抗変化型メモリーのオフ電流1/1000低下に成功
ReRAMの動作原理解明により 希少元素フリーの次世代メモリー開発に新局面
2012.08.30
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMSの研究グループは、アルミ陽極酸化膜を用いた希少元素フリー抵抗変化型メモリー(ReRAM)の電子状態を熱刺激電流測定によって初めて明らかにし、第1原理計算から導いた動作原理モデルの妥当性を検証しました。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝、以下NIMS) の木戸 義勇 元強磁場センター長をリーダとする研究グループは、アルミ陽極酸化膜を用いた希少元素フリー抵抗変化型メモリー(ReRAM)の電子状態を熱刺激電流測定によって初めて明らかにし、第1原理計算から導いた動作原理モデルの妥当性を検証しました。
- スマートフォンなどの電池の持続時間を長くするために、消費電力の小さい次世代メモリーとして期待されるものにReRAMがあります。このReRAMは素子の構造がシンプルで、電圧駆動により高速応答し、さらに書き換えと読み出し時以外は電力を必要としない不揮発性メモリーです。しかし、サイクル耐久性が十分でない等のために実用化に至っていません。これまで、多くのReRAM候補材料が検討され、それに伴って多くの動作原理が提唱されてきましたが、未だ確定された訳ではありません。
- 今回の研究では、希少元素に代えてアルミの酸化膜を用いたAlOx-ReRAMを作成し、高精度な熱刺激電流測定を行ったことで、AlOx-ReRAMの動作原理を世界で始めて明らかにしました。
- さらに明らかになった動作原理に着想し、作製したMIS構造のAlOx-ReRAMは、これまでの弱点であったオフ電流を、従来のMIM構造を有したAlOx-ReRAM に比べて1/1000以下 (11mA→7μA) に小さくすることにも成功しました。
- 今回の成果は、これまでReRAMに内在していた動作原理の不明さやオフ電流の低減等の問題を解決したばかりでなく、酸素空孔の電子状態を制御することで次世代メモリー開発の指導原理を示すことができました。つまり従来の半導体では利用することがなかった酸素空孔を電子の保持サイトとして利用する本技術は、希少元素フリーの酸素欠損型半導体に新たな局面を開くものです。
- 本研究は、文部科学省の平成19年度・元素戦略プロジェクト<産学官連携型>として実施され、その研究成果は、米国応用物理学会誌Journal of Applied Physics のオンライン版に8月7日に掲載されました。