酸化グラフェンのバンドギャップをその場で自在に制御

新規炭素系材料を用いた高性能ナノスケール素子に向けて

2013.12.16


独立行政法人 物質・材料研究機構

NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の研究グループは、究極的に薄い酸化グラフェンを利用した高性能ナノスケール素子の実現の鍵となる、バンドギャップの制御をその場で自在に行うことに成功しました。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の土屋敬志 博士研究員、寺部一弥 グループリーダー、青野正和 拠点長の研究グループは、究極的に薄い酸化グラフェンを利用した高性能ナノスケール素子の実現の鍵となる、バンドギャップの制御をその場で自在に行うことに成功しました。
  2. グラフェンは、次世代のナノスケール電子素子や回路を形成するための有望な新材料「ポストシリコン」として期待されています。しかし、グラフェンはバンドギャップが無い金属的伝導性を有する炭素系材料であり、このことが電子素子を構築する上で課題となっていました。これまでに、外部電圧によってバンドギャップをその場で制御する方法が提案されていましたが、外部電圧の印加を止めると制御したバンドギャップが消滅するという揮発性の制御法でした。
  3. 今回、我々は、外部からの電圧印加により、グラフェンに酸素原子を可逆的に吸着させたり、脱着させたりすることによって、グラフェンを構成する炭素原子の結合状態を変化させてバンドギャップを形成させ、しかもその場で自在に制御することに成功しました。この方法では、電圧印加を止めても制御したバンドギャップが持続するという不揮発性の特徴を有しています。グラフェンへの酸素原子の吸着と脱着の制御は、固体内で水素イオンの移動が可能な固体電解質を用いて、その固体電解質内の水素イオンとグラフェンに化学結合している酸素原子との間で電気化学反応を生じさせることによって実現しました。
  4. この制御技術は、グラフェンを用いた不揮発性スイッチング素子などの高性能ナノエレクトロニクス素子の実現へ近づくだけでなく、ダイヤモンド、カーボンナノチューブやフラーレンなどの新規炭素系材料における物性探索や制御の有力な手段として期待されます。
  5. 本研究成果は、日本時間2013年12月16日 (月) 20時に、科学雑誌「ADVANCED MATERIALS」のオンライン速報版で公開される予定です。

「プレス資料中の図1 (左)  : 酸化グラフェンのバンドギャップを制御するための素子構造。プレス資料中の図2 (右)  : 酸化グラフェンの結晶構造。蜂の巣状に炭素原子が結合したグラフェン構造に酸素原子(O)が結合している。」の画像

プレス資料中の図1 (左) : 酸化グラフェンのバンドギャップを制御するための素子構造。
プレス資料中の図2 (右) : 酸化グラフェンの結晶構造。蜂の巣状に炭素原子が結合したグラフェン構造に酸素原子(O)が結合している。