ナノテクにより光触媒の性能を大幅に向上

光触媒の応用先拡大に期待

2014.01.17


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS高分子材料ユニットは、京都大学化学研究所と共同研究で、ナノテクノロジーの光への利用で、可視光でも活性化できる光触媒材料の開発に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 高分子材料ユニット (ユニット長 : 一ノ瀬 泉) は、京都大学 (総長 : 松本紘) 化学研究所 (所長 : 佐藤直樹) と共同研究で、ナノテクノロジーの光への利用で、可視光でも活性化できる光触媒材料の開発に成功した。
  2. 酸化チタンは、紫外光照射により水分解を起こすことが発見されて以来、光触媒として幅広い分野で応用研究が進められている。二酸化チタン光触媒は、有害ガス等の分解で実用化されているが、太陽光に含まれる紫外光が僅かなため、太陽光を利用した水分解への応用までは至っていない。可視光応答を良くするため、二酸化チタンの改良や、二酸化チタン以外の材料の研究が行われているが、いずれも性能は不十分であった。
  3. 本研究では、二酸化チタン光触媒を、配列した金属ナノ粒子にナノメートル (10億分の1メートル) 程度に近接させて固定し、金属ナノ粒子間の微小な間隙で生じる強い光の非線形性4)を利用した。これにより、太陽光の主成分である可視光を用いて、紫外光に相当する光励起を引き起こすことが可能となった。実際、染色色素の分解反応で調べると、新たな光触媒の可視光照射時の反応速度が二酸化チタン単独の場合の6.5倍であることが分かった。
  4. 今回の成果は、二酸化チタン触媒を、光電極システムの薄膜電極材として利用したり、あるいは適切な還元材料と組み合わせて利用したりすることで、水分解による水素製造や二酸化炭素の還元による燃料・資源の合成などへの応用を可能とするのみでなく、有害化学物質の分解・除去にも利用できる。これらにより、実用化が始まっている光触媒の応用先の拡大が期待される。
  5. 本成果は、既に特許出願されており、Light: Science & Applications誌のオンライン版で2014年1月17日午後5時 (日本時間) に掲載される予定である。本研究は、文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域「反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開」 (領域代表 : 京都大学工学研究科 吉田潤一教授、http://www.sbchem.kyoto-u.ac.jp/syuuseki/index) における公募研究「近接場増強型光化学反応の空間・時間集積化」 (平成22~24年度) (研究代表者 : 三木 一司) の一環として行われたものである。

「プレス資料中の図1: 新型光触媒の模式図 新型光触媒は3層構造になっている。 (i) アルカンチオール分子で被覆された36ナノメートル (10億分の1メートル) の金ナノ粒子を平坦なITO基板上に配列させる。 (ii) TMOS分子層を形成。TMOS分子の一方は疎水性で金ナノ粒子上に固定化され、他方は親水性で酸化チタンが結合することができる。TMOS分子層の厚さは1ナノメートル。(iii)最後に、酸化チタン微粒子層を形成。」の画像

プレス資料中の図1: 新型光触媒の模式図
新型光触媒は3層構造になっている。 (i) アルカンチオール分子で被覆された36ナノメートル (10億分の1メートル) の金ナノ粒子を平坦なITO基板上に配列させる。 (ii) TMOS分子層を形成。TMOS分子の一方は疎水性で金ナノ粒子上に固定化され、他方は親水性で酸化チタンが結合することができる。TMOS分子層の厚さは1ナノメートル。(iii)最後に、酸化チタン微粒子層を形成。