分子の自己組織化 『長さ』の制御に世界で初めて成功
高分子・ナノテク材料の新たな合成法開発に大きく前進
2014.02.03
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMSは、分子が自発的に集合し新たな機能を持つ材料を作り上げる「自己組織化」をコントロールする手法を開発。1次元の分子集合体 (超分子ポリマー) の長さを自在に制御することに世界で初めて成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長 : 潮田 資勝)先端的共通技術部門 高分子材料ユニット(ユニット長 : 一ノ瀬 泉)の研究者らは、分子が自発的に組織化し、1次元の分子集合体 (超分子ポリマー) を形成する過程において、複数の異なる自己組織化が交錯する現象を発見、この現象を活用することによって、超分子ポリマーの長さを自在に制御することに成功した。
- 分子が自発的に組織化する現象 (自己組織化) は、高い機能を有する高分子「超分子ポリマー」を合成するためのきわめて重要なプロセスである。しかし、この過程は自発的に進行してしまうため、意図的に制御することが難しかった。例えば、既存の高分子合成の場合「リビング重合」と呼ばれる手法を使えば、合成されるポリマーの長さを精密に制御することが可能で、産業界で広く利用されている。しかし、分子の自己組織化を利用し超分子ポリマーを合成する際にはそのような手法は存在していなかった。
- 通常、自己組織化では分子が分散した状態から組織化した状態へ、一つの経路をたどって収束する。今回、新しく合成した機能性分子について、2種類の自己組織化が影響を及ぼし合う現象を発見した。本研究は、この過程が従来の高分子合成におけるリビング重合と同様のメカニズムで進行していることつきとめ、更に、リビング重合と同様の手段を用いて、自己組織化で生成する超分子ポリマーの長さを自在に制御することに世界で初めて成功した。
- 自己組織化は、材料科学、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーなど多岐にわたる学際分野できわめて重要な概念であり、物質の新たな合成手法として注目が高い。自己組織化によって得られるナノ構造体の物性・機能に関して活発な研究が行われている中、本研究は、材料設計においてもっとも根本的な構造要素である『長さ』の制御を可能とした。今後、自己組織化に基づく基礎・応用研究に新たな展開をもたらすと期待される。
- 本成果は、英国科学雑誌「Nature Chemistry」オンライン版で日本時間平成26年2月3日午前3時 (現地時間2日午後6時) に公開される。 (論文 : S. Ogi, K. Sugiyasu*, S. Manna, S. Samitsu, M. Takeuchi* “Living supramolecular polymerization realized through a biomimetic approach” Nature Chemistry, DOI: 10.1038/NCHEM.1849) )