ガラス基板上に単結晶に匹敵する品質の酸化物薄膜結晶を成長

酸化物ナノシートを種結晶にした横方向結晶成長

2014.06.04


公益財団法人神奈川科学技術アカデミー
独立行政法人物質・材料研究機構
国立大学法人東京大学

公益財団法人 神奈川科学技術アカデミー (KAST) の実用化実証事業において、長谷川 哲也 (東京大学教授、KAST研究代表者) 、廣瀬 靖 (東京大学助教、KAST研究員) 、平 健治 (東京大学大学院生、KAST研究協力員 (当時) ) らの研究グループは、佐々木 高義 (NIMSフェロー) らと連携し、安価なガラス基板上に高品質な酸化物薄膜結晶を成長する手法を開発しました。

概要

公益財団法人 神奈川科学技術アカデミー (以下、KAST) の実用化実証事業において、長谷川 哲也 (東京大学教授、KAST研究代表者) 、廣瀬 靖 (東京大学助教、KAST研究員) 、平 健治 (東京大学大学院生、KAST研究協力員 (当時) ) らの研究グループは、佐々木 高義 (独立行政法人物質・材料研究機構フェロー) らと連携し、安価なガラス基板上に高品質な酸化物薄膜結晶を成長する手法を開発しました。

目的物質の非晶質薄膜を熱処理によって結晶化させる固相結晶化法は、数~数10マイクロメートルサイズの大きな結晶粒からなる薄膜結晶の成長手法として知られています。しかし、ガラスやプラスチックのような安価な基板上では、結晶粒の配向を制御することが出来ないため、異方性の大きな材料では十分な性能を得られないことがありました。

研究グループは今回、酸化物ナノシートと呼ばれる厚さ1nm程度のシート状の単結晶をガラス基板に塗布し、固相結晶化法の種結晶とすることで、数マイクロメートル以上の大きさで配向の揃った結晶粒からなる薄膜結晶の成長に成功しました。この手法を用いてガラス基板上に作製した酸化チタン透明導電膜は、単結晶薄膜に匹敵する低い電気抵抗 (3.6×10 - 4Ωcm) と移動度 (13cm2V - 1s - 1) を示しました。

今回開発した手法は、酸化チタンだけでなく、代表的なエレクトロニクス材料であるチタン酸ストロンチウムにも適用できることを確認しており、酸化物薄膜結晶を用いた低コストで高性能なデバイスの開発につながると期待されます。


「プレス資料中の図1 :  (左図) 作製した酸化チタン薄膜の原子間力顕微鏡像。結晶粒の中心に、種結晶となったナノシートが存在することが確認できる。 (右図) 電子後方散乱回折法で決定した結晶粒の配向マップ。黒線で囲まれた領域が個々の結晶粒に対応し、色が配向をあらわす。全ての結晶粒が (001) 配向にそろっていることがわかる。」の画像

プレス資料中の図1 :
(左図) 作製した酸化チタン薄膜の原子間力顕微鏡像。結晶粒の中心に、種結晶となったナノシートが存在することが確認できる。
(右図) 電子後方散乱回折法で決定した結晶粒の配向マップ。黒線で囲まれた領域が個々の結晶粒に対応し、色が配向をあらわす。全ての結晶粒が (001) 配向にそろっていることがわかる。