チタン酸ストロンチウム基板の表面電子状態を解明

- 酸化物エレクトロニクスの高性能化に一歩前進 -

2014.11.27
(2014.11.28 更新)


東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)
独立行政法人 物質・材料研究機構(NIMS)
独立行政法人 科学技術振興機構(JST)

東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 (AIMR) の濱田幾太郎助教 (現 NIMS MANA研究者) と一杉太郎准教授の研究グループは、清水亮太日本学術振興会特別研究員らと共同で、超高分解能顕微鏡観察と第一原理計算の併用により、チタン酸ストロンチウム (SrTiO3) 単結晶表面の表面電子状態の解明に初めて成功し、電子密度の空間分布がエネルギーに依存して変化していることを明らかにしました。

概要

東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 (AIMR) の濱田幾太郎助教 (現 独立行政法人 物質・材料研究機構 (NIMS) MANA研究者) と一杉太郎准教授の研究グループは、清水亮太日本学術振興会特別研究員らと共同で、超高分解能顕微鏡観察と第一原理計算の併用により、チタン酸ストロンチウム (SrTiO3) 単結晶表面の表面電子状態の解明に初めて成功し、電子密度の空間分布がエネルギーに依存して変化していることを明らかにしました。

チタン酸ストロンチウムを始めとした金属酸化物は、微細加工の限界に達しつつあるシリコンに代わるエレクトロニクス素子の基幹物質として注目されています。しかし、酸化物の表面構造を原子レベルで制御することが極めて困難なため、表面の原子配列と電子状態の理解が十分とはいえず、高性能化や実用化への障害となっていました。

本研究グループはこれまでの研究で、試料の調製方法を最適化することにより、原子レベルで制御されたチタン酸ストロンチウム基板表面を作製することを可能にしています。本研究では、まず原子1つ1つが識別可能な走査型トンネル顕微鏡を用いて表面の観測を行ったところ、チタン原子と酸素原子が整然と並び、大小2つの穴が交互に並ぶ市松模様となっていることが分かりました。さらに、実験結果とは独立して物質の電子構造を計算する第一原理電子状態計算を組み合わせる手法を用いて、チタン酸ストロンチウム表面の電子状態を調べた結果、表面電子状態の空間分布がエネルギー状態によって、リング状から四葉のクローバー状へ変化することを明らかにしました。

今回の研究成果は、原子レベルで制御されたチタン酸ストロンチウムの表面における原子配列と電子状態を初めて解明した画期的な成果であり、酸化物エレクトロニクスの発展につながるだけでは無く、酸化物表面や異種酸化物界面で発現する電気伝導性、磁性、超伝導といった物理現象のメカニズム解明にもつながります。

本研究は、独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業・個人型研究 (さきがけ) : 「新物質科学と元素戦略」 (研究総括 : 細野秀雄) の一環として実施されました。本研究成果は平成26年11月27日 (米国東部時間) に米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン速報版で公開されます。


「プレスリリースの図3 :  (上段) SrTiO3表面の電子密度の空間分布像。左がフェルミ準位から+1.0 eV、右が+1.4 eVの分布状態を示す。リング状から四つ葉のクローバー状へと模様がエネルギーに従って変化している様子が確認できる。 (下段) 第一原理計算による電子の空間分布像。エネルギーは上の実験と揃えてあり、同様の模様の変化を再現している。」の画像

プレスリリースの図3 :
(上段) SrTiO3表面の電子密度の空間分布像。左がフェルミ準位から+1.0 eV、右が+1.4 eVの分布状態を示す。リング状から四つ葉のクローバー状へと模様がエネルギーに従って変化している様子が確認できる。
(下段) 第一原理計算による電子の空間分布像。エネルギーは上の実験と揃えてあり、同様の模様の変化を再現している。