単純構造化による安定したペロブスカイト太陽電池構築に成功
- 実用化に向けて着実に進歩—
2015.03.18
独立行政法人 物質・材料研究機構 (NIMS)
NIMS ナノ材料科学環境拠点、ペロブスカイト太陽電池特別推進チームは安価で高効率な次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池について、再現性や安定性が良く、理想的な半導体特性を示すペロブスカイト太陽電池の構築に成功しました。
概要
- 独立行政法人 物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) (以下「NIMS」という) ナノ材料科学環境拠点 (拠点長 : 魚崎 浩平) (以下「GREEN」という) 、ペロブスカイト太陽電池特別推進チーム (チームリーダー : 宮野健次郎) は安価で高効率な次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池について、再現性や安定性が良く、理想的な半導体特性を示すペロブスカイト太陽電池の構築に成功しました。
- ハロゲン化鉛系ペロブスカイト (以下、ペロブスカイト) の太陽電池への利用が6年前から始まりました。ペロブスカイト太陽電池は塗布などの低温プロセスで作製できること、高い光吸収能力を示すことで大きな電流を得ること、そして高い開放電圧を得ることから安価で高効率な次世代太陽電池として急速に研究が進んでいます。ペロブスカイトの半導体としての特徴を明らかにし、高効率な太陽電池材料の開発指針を得る目的で、NIMSでは昨年の10月にGREENにおいて副拠点長をチームリーダーとしたペロブスカイト太陽電池特別推進チームを発足させました。
- これまでペロブスカイト太陽電池は高い変換効率を示すものの、再現性が低く、また電流 - 電圧曲線の電圧掃引方向によって電流が変わるヒステリシスが観測され、安定性に足りる太陽電池ができていませんでした。そのため、ペロブスカイトの半導体特性も明らかにされていませんでした。 今回、以下のような2つの検討から再現性のある、安定したペロブスカイト太陽電池が得られました。
(1) 雰囲気制御が厳格な有機薄膜太陽電池の作製手法をペロブスカイト太陽電池の作製工程に導入することにより、水分や酸素濃度を除くと共に、太陽電池構造をできるだけ単純化したペロブスカイト太陽電池を作製しました。
(2) 今回、作製したペロブスカイト太陽電池は電流—電圧曲線におけるヒステリシスが観測されなかったことから安定性に問題が無いことがわかりました。さらに理想的なダイオード特性を示すことが明らかとなり、ペロブスカイト材料が太陽電池として優れた半導体であることが示されました。 - 今回、ペロブスカイト太陽電池の内部抵抗解析から、ペロブスカイトの半導体特性を説明する等価回路モデルも提案しています。本モデルの1つの特徴は、ペロブスカイト層の電荷輸送過程において、伝導帯 - 価電子帯間に存在する不純物準位に由来する輸送過程の存在を示すものです。この輸送過程により、ペロブスカイト太陽電池の効率が充分に上がっていない可能性があります。
- 今後、不純物準位の由来とその太陽電池への影響を明らかにしていきます。また、不純物準位を取り除き、太陽電池の高効率化を行い、エネルギー環境問題に貢献していきます。
- 今回の研究成果は、文部科学省の委託事業「ナノテクノロジーを活用した環境技術開発プログラム」に基づいたGREENにおいて得られたものです。
- 本研究成果は、アメリカ合衆国の物理学協会誌 Applied Physics Lettersにて2015年3月に掲載されます。