高い吸着力と選択性を持つレアメタル吸着剤を開発
~スポーク状のナノ細孔作成で実現。都市鉱山開発の促進に道~
2015.12.07
国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)
NIMSのSherif El-Safty (シェリフ・エル・サフティ) 主席研究員は、電子基板やリチウムイオン電池の溶解処理溶液に極微量だけ含まれるパラジウム、コバルトなどのレアメタルや、金、銀などの貴金属を、目的の金属だけ高感度に検出し、取り出す技術を開発しました。
概要
- 国立研究開発法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 元素戦略材料センター資源循環設計グループのSherif El-Safty (シェリフ・エル・サフティ) 主席研究員は、電子基板やリチウムイオン電池の溶解処理溶液に極微量だけ含まれるパラジウム、コバルトなどのレアメタルや、金、銀などの貴金属を、目的の金属だけ高感度に検出し、取り出す技術を開発しました。
- 本研究グループが開発してきたナノスケールの細孔を持つ吸着剤 (HOM吸着剤) を改良し、細孔を四方八方に伸びる三次元のスポーク状の空隙構造にすることにより、本技術を実現しました。従来の吸着剤においても、細孔の内壁を、目的イオンと選択的に反応する官能基を持つ物質で覆うことで、目的としたイオンのみを選択的に吸着できました。しかし今回、空隙の構造をスポーク状にすることによって、内部表面積が増大し、1ppm (0.0001%) 以下のレアメタルも敏感に吸着できるようになりました。
- 電子基板やリチウムイオン電池を酸などで溶解処理した溶液には多様な金属イオンが混在していますが、本吸着材を用いて一度処理するだけで、金、銀、パラジウム、コバルトという目的の金属を、それぞれ95%以上の精度で別々に抽出することができました。また、スポーク状にしたことで細孔と官能基を持つ物質との結合も強くなって耐久性が上がり、逆抽出のプロセスによる吸着剤の再使用が繰り返し可能となります。
- レアメタルの多くは、電子材料として用いる際、高度な不純物の管理が求められています。今回開発された技術により取り出されたレアメタルは高純度で、電子材料用原料のリサイクルを可能にし、都市鉱山開発を促進することができます。
- この成果は、Journal of Visualized Experimentsにて2015年11月30日にオンライン掲載されました。