シリコン上に非線形光学デバイスを実現
ハイブリッドシリコンフォトニクスへの一歩
2007.08.17
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS光材料センターおよび早稲田大学は、シリコン上で世界最高効率の非線形光学デバイスを実現し、強誘電体材料とのハイブリッドシリコンフォトニクスへの可能性を開いた。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) の栗村 直主任研究員、早稲田大学の中島啓幾教授らは、シリコン上で世界最高効率の非線形光学デバイスを実現し、強誘電体材料とのハイブリッドシリコンフォトニクスへの可能性を開いた。本研究成果の一部は、独立行政法人情報通信研究機構 (理事長代行 : 池川 博士) の委託研究「量子制御光変復調技術」を受けて行われたものである。
- 電子デバイスおよび電子回路の能力限界をきめる要素としてデータ転送スピードが重視されている。電子デバイスのバススピードは1GHz程度であるが光ファイバ通信に代表される光通信は40GHzを越えるデータ転送レートをもち波長多重化によりTHzを越える大容量化が実現されている。シリコンを代表とする電子デバイスに光通信の高速伝送技術を持ち込むことは、電子デバイスのブレークスルーになると期待されており、シリコンフォトニクスと呼ばれている。世界最大の半導体メーカー、インテルはこれを積極的に推し進めている。
- シリコン内ではレーザー光源を実現することが難しく、InP系の半導体レーザーをシリコン上に集積化するハイブリッドシリコンフォトニクスがインテルおよびカリフォルニア大学サンタバーバラ校の共同研究で提案されている。今回は強誘電体導波路をシリコン上に実現し、シリコンで困難な非線形光学デバイスを作製して波長変換の機能を実現した。
- 今回開発した非線形光学デバイスはニオブ酸リチウム化合物から作製しており、その電気的極性が周期的に分極反転しているものである。シリコン上に微細分極反転構造および接着リッジ光導波路を両立したことで、従来のシリコン内波長変換法に比べて1000倍前後の変換効率を達成できた。これらは、光通信デバイスの小型化集積化を通して量子情報通信用光源の小型化、低消費電力化にも貢献し、高機能シリコンフォトニクスにはずみをつける成果といえる。
- 本研究成果は、8月末開催の国際会議Conference on Lasers and Electro-Optics (レーザー・電気光学国際会議) 9月開催の応用物理学会および10月開催の国際会議Microoptics Conference (微小光学国際会議) にて発表される予定である。