深紫外線発光する高純度六方晶窒化ホウ素の常圧液相成長に成功
2007.08.17
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS光材料センターは、深紫外線領域で高輝度に発光する高品質な六方晶窒化ホウ素 (hBN) を1気圧下で簡便に合成する技術を開発した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 光材料センター (センター長 : 北村 健二) 光電機能グループの窪田 陽一、渡邊 賢司、津田 統、谷口 尚らは、深紫外線領域で高輝度に発光する高品質な六方晶窒化ホウ素 (hBN) を1気圧下で簡便に合成する技術を開発した。この方法を用いて、融液から、基板上へのhBN結晶の成長を実現した。この基板上に成長したhBN結晶からも特有の強い深紫外線発光を確認した。
- 波長350 nm (ナノメートル : ナノは10億分の1) 以下の深紫外線光源は、青色半導体レーザーを用いた光記録装置の記録密度をはるかに上回る情報記録デバイスの実現や、ダイオキシン、PCBなど有害物質の分解など環境保全分野での利用、水銀ランプに代わる殺菌用光源など医療分野への展開など幅広い応用が期待されている。現在、深紫外光源に関しては、窒化アルミニウム系材料を中心に国内外で開発研究が活発に進められている。一方、近年、高純度のhBNの深紫外線発光素子材料としての可能性を示唆する興味深い特性が見出された。hBNはこれまで耐熱・絶縁材料として古くから実用されている材料であるが、このhBNを高純度化すると、自由励起子に由来する波長215nmを中心とする単峰性の非常に強い発光スペクトルが得られることが最近明らかとなった。しかし、これまで、このような発光を示す高純度結晶は高反応性のバリウム系溶媒を用いた高温高圧合成法 (1500-1750℃、4-4.5万気圧) という、極めて特殊な合成技術でしか得られていなかった。
- 今回、我々は合金系溶媒を用いることで、高圧合成で得られた高純度単結晶に匹敵する、高輝度に深紫外線発光するhBN結晶を1気圧下で合成できることを見出した。この溶媒を用いて、融液から基板上にhBN結晶を成長させることも実現した。今回の発見により特殊な高圧合成装置を用いることなく、簡便に高品質のhBN結晶を1気圧下で合成することが可能となった。
- 本研究成果により、高輝度深紫外線発光素子としての応用が期待されるhBNの汎用プロセスによる合成が可能となった。合成プロセスの最適化により、常圧下・溶液法による大型単結晶成長・大型異種基板上への溶液成長などの応用研究の進展が期待される。
- この研究成果は、8月17日付け米国科学誌Scienceに公開される予定である。