デバイス開発用大面積高性能酸化亜鉛ウェハーを開発
2007.08.28
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS光材料センターは、三菱ガス化学株式会社 と共同で、酸化物電子デバイス作製に有用な大面積酸化亜鉛ウェハーを液相エピタキシー(LPE)で製造する技術を開発した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄 ; 以下、NIMS) の光材料センター 光電機能グループの大橋 直樹 グループリーダーらは、三菱ガス化学株式会社 (社長 : 酒井 和夫 ; 以下、MGC)と共同で、酸化物電子デバイス作製に有用な大面積酸化亜鉛ウェハーを液相エピタキシー(LPE)法で製造する技術を開発した。
- 近年、水熱合成技術によって育成された純酸化亜鉛単結晶ウェハーが供給され、酸化亜鉛に関する研究開発が促進されてきた。一方、電子デバイスを構成する上では、ドーピングを施したウェハーや、添加物を加えてバンドギャップ幅を制御した固溶体ウェハーが有用である。しかし、水熱合成法ではそうした固溶体ウェハーの製造には困難が伴う。また、量産化を見込む上では、大面積のウェハーが必要とされていた。
- 今回、MGCが培ったLPE技術と、NIMSが培ったワイドギャップ半導体結晶技術を連携させて開発を進めた。LPE法は低融点の融剤に溶かし込んだ原料を基板上に結晶成長させる技術であり、種々の副成分を添加した結晶の育成が可能である。例えば、アルミニウムを添加して高い伝導性を付与した酸化亜鉛や、酸化マグネシウムとの固溶体化によって、純酸化亜鉛に比べて、バンドギャップを拡張した酸化亜鉛などの様々な特性をもったウェハーの製造が実現する。また、LPE法は大面積ウェハーの製造に適した製造技術である。
- 酸化亜鉛は、窒化ガリウムと同じ結晶構造、同様のバンドギャップを有し、オプトエレクトロニクス材料として注目され、国内外で盛んに研究開発が進められている材料である。今回の大面積固溶体ウェハー製造技術の確立により、その研究開発、あるいは、酸化物エレクトロニクスデバイスの実用化が加速されると期待される。
- なお、本開発成果については、9月に開催される応用物理学会講演会 (自9月4日至9月8日 ; 於 : 北海道工業大学) にて発表されます。