超強磁場プロセスで実現されたメソチャネルの垂直配向

強磁場が作用する反磁性物質への磁場効果

2007.11.05


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSのMANAは、ナノセラミックスセンター、早稲田大学理工学術院と共に、強磁場共用ステーションのハイブリッドマグネットが発生する30テスラ級の超強磁場を利用することにより、メソ (ナノ) チャネルを基板に対して垂直に配向させることに成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の山内 悠輔 若手独立研究員は、ナノセラミックスセンター (センター長 : 目 義雄) 微粒子プロセスグループの目 義雄 グループリーダー (併任) ・廣田 憲之 研究員、早稲田大学理工学術院の黒田 一幸 教授らと共に、強磁場共用ステーション (ステーション長 : 木戸 義勇) のハイブリッドマグネットが発生する30テスラ級の超強磁場を利用することにより、メソ (ナノ) チャネルを基板に対して垂直に配向させることに成功した。
  2. これまで界面活性剤とシリカ源を含む前駆溶液を基板上にコーティングすることにより、様々なメソ (ナノ) 構造有する透明薄膜が得られてきた。このような薄膜を分子デバイス等に利用するためには、マクロスコピックなレベルでメソポーラス構造が制御されていることが望ましい。特に、メソチャネルが基板に対し垂直に配向した『垂直配向性メソポーラス薄膜』は、超高密度記録媒体としての展開をはじめ高活性触媒・高感度センサーなどへの応用という観点からも、メソポーラス物質の研究の更なるブレイクスルーをもたらすと考えられ、その実現が期待されてきた。
  3. 本研究の強磁場プロセスは、メソ細孔の鋳型となる界面活性剤分子 (弱磁性体) の非常に小さい磁化率を利用する。弱磁性体の磁化率は強磁性体に比べ、非常に小さく通常配向は起こらない。しかし、磁場効果は磁場の大きさの2乗に比例するため、強磁場下では弱磁性体であっても強磁性体のように振る舞うことが可能となる。そこで今回、界面活性剤分子の自己集合の過程で強磁場を印加し、超分子鋳型をあらかじめ、基板と垂直に配向させ、その周りを無機種 (シリカ) の重合を行った。その結果、完全ではないものの比較的小さな界面活性剤分子を用いても、垂直に配向させることに初めて成功した。
  4. メソポーラスシリカ薄膜のメソチャネルの配向を制御することは重要な課題であり、メソチャネルが垂直方向へ配向することで、超高密度記録媒体としての展開をはじめ、触媒・高感度センサーなど種々の応用につながることが期待できる。
  5. 本研究成果は、国際学術誌『Chemistry - An Asian Journal』の12月号に掲載され、表紙を飾る予定である。

「プレス資料中の図: 強磁場プロセスを利用したメソチャネルの垂直配向Y.Yamauchi et al., Chem. Asian. J., Advanced View (2007).」の画像

プレス資料中の図: 強磁場プロセスを利用したメソチャネルの垂直配向
Y.Yamauchi et al., Chem. Asian. J., Advanced View (2007).