NMR用直流電源調整大電流ダミーロードの開発に成功

2007.11.07


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS強磁場共用ステーションは、国内最大の定常強磁場を発生するハイブリッド磁石で高分解能NMR測定を可能にするための電源調整用大電流ダミーロード (模擬負荷) を住友電設株式会社と共同で開発することに成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 強磁場共用ステーション (ステーション長 : 木戸 義勇) の二森 茂樹 主幹エンジニアらは、国内最大の定常強磁場を発生するハイブリッド磁石で高分解能NMR測定を可能にするための電源調整用大電流ダミーロード (模擬負荷) を住友電設株式会社と共同で開発に成功した。
  2. 強磁場はNMRの感度と分解能を向上させるため、NMRの強磁場化を巡って競争が繰り広げられている。物質・材料研究機構 強磁場共用ステーションは国内最大の定常強磁場を発生するハイブリッド磁石を有する。水冷銅磁石と超伝導磁石を組み合わせるハイブリッド方式は現在最高の定常強磁場を発生する方法であり、NMR測定にとって非常に魅力的である。しかしながら水冷銅磁石の磁場安定度は超伝導磁石に比べ圧倒的に劣り、ハイブリッド磁石でのNMR測定は非常に困難であり不向きと言われてきた。
  3. ハイブリッド磁石でのNMR測定を可能にするためには水冷銅磁石の磁場安定度を向上させる必要がある。水冷銅磁石は超伝導磁石のように電源を切り離して永久電流による運転が出来ないため電源の安定度が磁場の安定度に直接影響する。NMR測定を行うには電源の安定度を向上させる必要があり、そのためには電源出力調整が必要となる。
  4. 電源出力の調整時には適切な負荷 (水冷銅磁石) を接続する必要があるが、直接に水冷銅磁石を接続すると電源出力調整時に発生する大きな出力変動によって磁石に過大な電磁力がかかり、破壊に至る。そのため電源出力の調整に際しては磁石と同等の負荷性能を持ちながら急激な出力変動に耐えうるダミーロード (模擬負荷) を接続し、電源出力を安定化した後に磁石へと接続を切り替える必要がある。
  5. 水冷銅磁石と同等の負荷特性を有し、4.3m×1.2m×1.2mと非常にコンパクトなダミーロードの開発に成功した。このコンパクトさゆえ、本体は地上5mの空間に設置することができ、地上の空間を占拠しない。 今回の開発はハイブリッド磁石電源のみならず10MW以上の大電力電源の調整を可能にした。高安定な磁場発生が可能になれば、ハイブリッド磁石を用いた30T(テスラ)を超える強磁場NMRが実現・発展すると思われる。

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プレス資料中の図2: ダミーロード (模擬負荷) の実物写真