フッ化物強誘電体単結晶を用いてSHGの発光に成功

2007.11.29


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS光材料センターは、日立化成工業株式会社・機能性材料研究所と共同で、大型2インチサイズのフッ化物強誘電体単結晶育成と、擬似位相整合デバイスの開発、並びにそれらを用いての第二高調波発生に世界で初めて成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 光材料センター 光周波数変換グループの島村 清史 グループリーダー、ガルシア・ビジョラ 主任研究員らは、日立化成工業株式会社 (執行役社長 : 長瀬 寧次) ・機能性材料研究所と共同で、大型2インチサイズのフッ化物強誘電体単結晶育成と、擬似位相整合 (QPM) デバイスの開発、並びにそれらを用いての第二高調波発生 (SHG) に世界で初めて成功した。
  2. 紫外・真空紫外レーザーは医用・加工など、様々な分野で期待されている。従来、フッ化物系ガスを利用したエキシマレーザーが用いられているが、ビーム品質や取り扱いなど各種の問題が指摘されているため、酸化物の非線形光学結晶を利用した全固体化レーザーの開発が研究されてきたが、各種の問題が指摘されている。そのため、全固体化された紫外・真空紫外レーザーの開発は遅れている。
  3. 今回開発した結晶はフッ化バリウム・マグネシウムであり、品質の向上により、小さな抗電界を示すなど、優れた強誘電特性を有することがわかった。また、単結晶の育成は引き上げ法 (Czochralski法) により2インチサイズの大型化技術を確立した後、日立化成工業株式会社が培ってきたBridgman法を適用し、さらに品質の高い単結晶の育成を実現したことによって、今回の技術が達成された。
  4. 得られたQPMデバイスにより、3つの波長 (532nm、415nm、406nm) でSHG光が確認された。フッ化物単結晶は従来、レンズ材料やコーティング材といった光学材料として知られているが、今回のような機能性材料としての応用は初めて。波長変換の方法としてSHGは最も効率が高い方法であるが、今回のフッ化物強誘電体単結晶を用いたSHGの成功は紫外・真空紫外領域での全固体SHGレーザー実現に向け、大きな道を拓く事となった。
  5. 本研究成果は2008年3月開催の応用物理学会春季学術講演会や日本セラミックス協会春の年会をはじめ、各種の国際会議等で発表を予定している。また本研究の一部は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 産業技術研究助成事業の助成を受けている。

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プレス資料中の図1: フッ化物強誘電体BaMgF4単結晶 (左上:Φ2インチインゴット)