都市鉱山発掘、人工鉱石化リサイクルを提案

リサイクルの中間工程への技術投入で資源の見えるリサイクルチェーン作りを

2008.03.26


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS元素戦略クラスター長の原田幸明は、3月27日に行われる資源素材学会2008年春季大会の「資源・環境の政策」のセッションにおいて、「人工鉱石化リサイクル」という方向性を発表する。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄 以下「NIMS」) 、元素戦略クラスター長の原田 幸明 材料ラボ長は、3月27日に東京大学生産技術研究所で行われる資源素材学会2008年春季大会の「資源・環境の政策」のセッションにおいて独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門 小林 幹男 副研究部門長らとの連名で、「人工鉱石化リサイクル」という方向性を発表する。
  2. わが国における金属を含有している廃棄物資源の有効利用の取り組みは、東北大学多元物質科学研究所内に平成18年3月に設立されたRtoS研究会などで社会システム、経済性の問題を踏まえてなされている。そのなかで、今回の「人工鉱石化リサイクル」はひとつの技術的課題の解決の可能性を示すものと考えられる。
  3. 「人工鉱石化リサイクル」 (以降「人工鉱石」、英語Urban Concentrates (造語) ) とは、これまでもっぱら"「回収」→「抽出」"として捉えられ「抽出」部分での付加価値が注目されがちであったリサイクルの工程の中に、「濃縮」というプロセスを積極的に位置づけて技術投入することで、抽出しやすい付加価値の高まった再資源化原料を提供することである。「人工鉱石」は天然鉱石で行われている純度の低い「粗鉱」から高濃度の「精鉱」 (concentrates) づくりに相当するプロセスが従来の都市鉱山リサイクルでは欠けていたことに着目した概念である。
  4. 人工鉱石では、不要になった製品の中の有価金属を直接取り出すのではなく、抽出・製錬の阻害要因となる他の混在物を低減させることで、金やレアメタルなど目的とされる有価金属の濃度を高めて、次の抽出・製錬段階の原料とする。これにより抽出・製錬段階での製錬炉や設備の負荷が大幅に減らせるため、リサイクルにかかる一つの技術的障壁を低減できる。
  5. 人工鉱石の鍵となる技術は、「濃縮」技術であり、分解、破砕などと組み合わせた金属成分の特性に注目した選別技術が必要となる。この技術は産業技術総合研究所等で開発してきた選択粉砕と微粒子分離の技術や、NIMSのピンポイント分離技術が活用できる。また、長期的な効率化を考えれば製品自体に解体・分解性設計素材を組み込むことが重要であり、NIMSで研究している解体性接合技術なども貢献できると期待される。
  6. 本件は、資源素材学会2008年春季大会で発表されるとともに、関連発表が3月26日から28日に武蔵工大で行われる日本鉄鋼協会2008年春季大会の討論会講演「資源と環境を考慮した素材戦略モデル開発」でも行われる

「プレス資料中の図: 携帯の中の金に注目したフローの現状」の画像

プレス資料中の図: 携帯の中の金に注目したフローの現状



発表学会関係

資源素材学会
2008年資源・素材学会春季大会
〒107-0052 東京都港区赤坂9丁目6-41
TEL: 03-3402-0541
FAX: 03-3403-1776
日本鉄鋼協会
日本鉄鋼協会第155回春季講演大会
〒101-0048 東京都千代田区神田司町2-2 新倉ビル2階
TEL: 03-5209-7011
FAX: 03-3257-1110

参考資料関係 ※図に用いた参考資料は次の方々のご好意によるものです。

独立行政法人産業技術総合研究所資料
小林 幹男
独立行政法人産業技術総合研究所 環境管理技術研究部門 副研究部門長
〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1
TEL: 029-861-8081
FAX: 029-861-8458
独立行政法人国立環境研究所資料
吉田 綾
独立行政法人国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター 研究員
〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
TEL: 029-850-2768
FAX: 029-850-2931