共振器なしで高出力緑色レーザーを発生
レーザーシアターからレーザー加工も視野に
2008.03.25
独立行政法人物質・材料研究機構
国立大学法人東京大学
NIMS、東大は、NIMS開発の定比組成タンタル酸リチウムに高効率波長変換を作製し、東大開発の高品質高出力レーザーを用いて、共振器なしで連続緑色光16Wを実現した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) の栗村 直 主任研究員、東京大学新領域創成科学研究科 三尾 典克 准教授らのグループは、物質・材料研究機構で独自に開発した定比組成タンタル酸リチウム (Stoichiometric (ストイキオメトリック) LiTaO3 : SLTと略称) に高効率波長変換デバイスを作製し、東京大学で開発した高品質高出力レーザーを用いて、共振器なしで連続緑色光16Wを実現した。
- 緑色波長域では半導体レーザーが存在しないため、赤外のレーザーから波長変換で緑色レーザーを得る方式が一般的である。レーザーテレビなどの応用においては出力3W程度、レーザーシアターにおいては10W以上の出力が求められており、10Wを越えればレーザートリミング、レーザーマーキングなどレーザー加工への応用も期待される。
しかし、従来、シングルパスの波長変換で10W以上の出力を得ることは極めて困難であった。小型低コストの緑色レーザーを実現するには、共振器を用いないシングルパス波長変換が有利である。共振器は振動や温度変化に敏感で、調整に高い経験を必要とするためコスト増の要因となる。今回、共振器のない緑色波長域の連続発振波長変換で、世界記録を50%上回る16Wを実現した。なお、従来の記録はスタンフォード大学が有する10.5Wであった。 - 高出力レーザーを実現するには廃熱を効率よく行うことが重要である。そこで熱伝導率の高い波長変換材料SLTに、微細周期8μmをもつ分極反転構造をつくりこんで、波長変換デバイスを実現した。高出力波長変換用に廃熱型波長変換モジュールを設計してデバイスの温度上昇を抑制した。また東京大学で独自に開発した高品質の単一周波数100Wレーザーを用いることで効率、出力共に高い波長変換を可能にした。
- 今回開発した波長変換では、共振器を用いずに高効率を実現しているため、精密な光学調整を必要とせず、振動時も安定である。レーザー加工などの過酷なフィールドに適した波長変換方式と言える。また波長変換デバイス自体は高出力まで動作できることが判明したため、低出力領域では十分な寿命が期待できる。
- 本研究成果は、3月開催の応用物理学会および5月初旬開催の国際会議Conference on Lasers and Electro-Optics (レーザー・電気光学国際会議) にて発表される予定である。