中性子で微粒子の配向過程を解明
中性子回折で実現したセラミックス微粒子配向過程の直接観察
2008.03.19
独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人日本原子力研究開発機構
NIMSは、日本原子力研究開発機構と共同で、原子力機構の研究用原子炉 (JRR-3) における中性子散乱実験により、溶媒中に分散した弱磁性微粒子が磁場によって配向する過程を直接観察することに成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 量子ビームセンターの寺田 典樹 研究員らは、独立行政法人日本原子力研究開発機構 (理事長 : 岡﨑 俊雄、以下「原子力機構」という) 先端基礎研究センターの目時 直人 研究主幹らと共同で、原子力機構の研究用原子炉 (JRR-3) における中性子散乱実験により、溶媒中に分散した弱磁性微粒子が磁場によって配向する過程を直接観察することに成功した。
- セラミックスの中でもアルミナ材料は、電気絶縁特性、耐熱性、力学特性、熱伝導、光学特性が優れているため広く用いられている。アルミナ材料を形成するアルミナ微粒子を強磁場環境下において一定方向に配向することにより、こうした特性は更に向上する。しかしながら、磁場による配向をより完全にするためには、微粒子の配向過程の解明が求められていた。
- 今回、原子力機構の研究用原子炉JRR-3に設置された多目的熱中性子ビームポート「武蔵」を用いた中性子散乱実験によって、10テスラまでの磁場下で、溶媒中に分散したアルミナ微粒子が配向する過程を観察することに初めて成功した。この結果、アルミナ微粒子を完全に配向させるためには20テスラ以上の強磁場が必要であることを明らかにした。
- 本成果は、磁場によって弱磁性の微粒子が配向する過程を直接観察した初めての例であり、中性子回折が微粒子の配向過程を直接観測する手段として有用な方法であることを示した。X線と比較して物質を透過する能力の高い中性子を用いると、試料全体の磁場配向過程を捉える事ができるため、今後、中性子回折によって様々な材料の微粒子の配向過程が解明されることが期待される。
- 本研究成果は、米国学術誌『Applied Physics Letters』に3月24日に掲載される予定である。