微小球を並べて作るマイクロ分波器
自己組織化プロセスを用いた集積回路の光配線
2008.05.30
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS量子ドットセンターは東北大学 多元物質科学研究所と共同で、微小球共振器を自己組織化的に並べることで、直角曲げが可能なミクロンスケールの光配線と分波器の開発に成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、量子ドットセンターの三井 正 主任研究員らは国立大学法人東北大学 多元物質科学研究所と共同で、微小球共振器を自己組織化的に並べることで、直角曲げが可能なミクロンスケールの光配線と分波器の開発に成功した。
- 近年、コンピュータをさらに高速化するために、集積回路内部の情報伝送の一部を光通信に置き換える方法が注目されている。これを実現するためには数µmの幅で最大数mmに渡って光を伝搬させ、さらに数µmの曲率半径で自在に光配線を行う必要がある。しかしながら、これまでの光導波路の技術では屈折率差が大きくとれないため、このような小さい曲率半径を実現できなかった。一方で、エアートレンチ型クラッドやフォトニック結晶を用いる方法が報告されているが、これらの新しい方法も、光を閉じ込めるための構造が外側に必要であるため、「ミクロンスケールの幅で、自在に」光導波路を作ることが難しかった。
- 高屈折率の光共振器を連結させて作る光導波路 (coupled-resonator optical waveguide (CROW) ) はクラッドを必要とせず、共振器自体を配列することで自在に光配線が可能である。特に、微小球を共振器として使う方法は、自己組織化手法を用いて配列することが可能となる。今回、パターニングを行った基板をテンプレートとして用いることで、微小球を配列し、その内部の伝播光を導波路 - 集光モード近接場光学顕微鏡で観察を行ったところ、異なる共振波長の光を分岐させ、分波器としても機能することがわかった。
- 今回開発した光配線法は、集積回路内部に複数個配置された中央演算装置 (CPU) の間で、高速で情報をやり取りするための光導波路として応用が可能である。さらに、複数の波長を使い分けることで、行き先を指定した情報伝送も可能になると期待され、今後はより高度な機能を持った光導波路について研究を進めていく。
- 本研究成果は、東北大学 多元物質科学研究所 - 物質・材料研究機構 連携ラボプロジェクトの一環として得られたものであり、6月26~27日につくば国際会議場で開催される日本光学会第17回ナノオプティクス研究討論会にて発表される予定である。また、米科学誌Optics Letters誌に、近日掲載される。