メソポーラス金属の大細孔径化に成功
メソポーラス金属の新展開、金属ナノ構造への新たな提案
2008.06.09
独立行政法人物質・材料研究機構
MANAの山内 悠輔 若手独立研究者は、ブロックコポリマーの自己組織化で形成する分子集合体を鋳型として用い、電気化学的な手法を適用することによりメソポーラス金属の大細孔径化に成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の山内 悠輔 若手独立研究者は、大きなサイズの両親媒性分子であるブロックコポリマーの自己組織化によって形成する分子集合体を鋳型として用い、電気化学的な手法を適用することによりメソポーラス金属の大細孔径化に成功した。
- 規則的な細孔配列と高い表面積を有しているメソポーラス金属は、金属のみの骨格であり、従来のシリカ系メソポーラス物質では不可能であった電気化学的な幅広い応用が期待できる。従来のメソポーラス物質の合成においては、数nmから数十nmの幅広い範囲で細孔径の制御が可能であったが、メソポーラス金属の細孔径は現在のところ3~4nm程度に限られ、大きな分子のアクセスや物質拡散能の向上を実現するために、メソポーラス金属の大細孔化が求められていた。
- この課題を克服するため、分子設計されたブロックポリマーを自己組織化させることで大きなサイズの分子集合体を形成させ、それを直接鋳型として用いて、精密な電解析出の制御のもと、白金イオンを還元させた。その結果、今までにない10nmをこえる大きな細孔径を有するメソポーラス白金の合成に成功した。
- 大きなメソ細孔は、従来の小さな細孔では対応できなかった大きな分子を取り込むことができ、様々な大きなゲスト分子を細孔の金属表面と効率的に電気化学反応させることが可能となる。本技術は白金に留まらず、様々な金属・合金系に適用でき、またブロックコポリマーの分子サイズを変えることで、より広範囲で細孔径を制御することができ、組成・構造の両面から用途にあった電極材料をテーラーメイドでデザインできる。
- 本研究成果は、今春の日本セラミックス協会年会で学術写真賞『優秀賞』を受賞し、ドイツ化学会『Angewandte Chemie-International Edition』誌に速報 (Communication) として近日に発表される予定である。