酸化物系超伝導NMR装置を用いて、世界で初めてタンパク質の高分解能NMR計測に成功
930MHz 高分解能NMRマグネットの稼働開始
2008.10.17
独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人理化学研究所
NIMS、理化学研究所、 (株) 神戸製鋼所、日本電子 (株) の研究チームは、世界で初めて酸化物系超伝導コイルを使用した高分解能NMR装置を開発し、タンパク質水溶液サンプルのNMR測定に成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、独立行政法人理化学研究所 (理事長 : 野依 良治) 、 (株) 神戸製鋼所 (社長 : 犬伏 泰夫) 、日本電子 (株) (社長 : 栗原権右衛門) の研究チーム (チームリーダー : 物質・材料研究機構 木吉 司グループリーダー) は、独立行政法人科学技術振興機構 先端計測分析技術・機器開発事業の一環として、世界で初めて酸化物系超伝導コイルを使用した高分解能NMR装置を開発し、タンパク質水溶液サンプルのNMR測定に成功した。
- 酸化物系超伝導線材は強磁場で優れた性能を有するため、強磁場を必要とするNMR装置への適用が期待されているが、これまでNMRで要求される磁場の時間的安定度と空間的均一度を得ることが困難であるため、実用化されていなかった。
そこで、研究チームでは、酸化物系超伝導磁石を電源で駆動した状態でも、従来のNMR装置と同程度の磁場の時間的安定度と空間的均一度を得られる方法の開発に取り組み、下記の4つの開発に成功した。- 高い磁場均一度が得られるテープ形状酸化物系超伝導線材の精密巻線技術
- 電源で駆動した状態でも磁石を冷やす液体ヘリウムを長時間保持できるクライオスタット
- 世界最高レベルの電流の安定度を持つ磁石駆動用の外部電源
- 電源により生じる変動磁場を補償する磁場安定化技術
- NMR 装置は既に23.5T (プロトンの共鳴周波数1GHzに対応) まであと一歩と迫っているが、この磁場は金属系超伝導線材の使用限界と考えられており、 1GHzを超える磁場の実現には酸化物系超伝導コイルの使用が不可欠である。この度の成果により、酸化物系超伝導コイルを用いても磁場の安定度と均一度が得られることが実証できたことにより、1GHzを超えるNMR装置の実現に向け、大きな突破口が開かれた。
- 本研究結果は、独立行政法人科学技術振興機構における先端計測分析技術・機器開発事業「超1GHzNMRシステムの開発」の一環として得られたものであり、2008年11月12日から高知市で開催される低温工学・超電導学会で発表される。