炭素原子層1層のシートを使って結合量子ドット素子を実現 !
新カーボン材料による集積化ナノ量子デバイス開発へ道
2009.07.10
独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人理化学研究所
NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)は、理化学研究所と共同で、炭素原子が蜂の巣状に並んだ原子層1層のシートを用いて2つの量子ドットを結合させた2重結合量子ドット素子を作製することに成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長: 潮田 資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長: 青野 正和) の森山 悟士 独立研究者らは、独立行政法人理化学研究所 (理事長: 野依 良治) の石橋 幸治 主任研究員らと共同で、炭素原子が蜂の巣状に並んだ原子層1層のシート (以下、グラフェン) を用いて2つの量子ドットを結合させた2重結合量子ドット素子を作製することに成功した。
- 本研究では, グラフェンが三層 (厚さはおよそ1ナノメートル) からなるグラフェンシートに対し、 電子線ビームリソグラフィと反応性イオンエッチング技術を用いてシートを直接加工することにより、電子を閉じ込める2つの近接した量子ドットや、 電気伝導を制御する電極等のデバイス構造を全て同じ一枚のグラフェンシートで作製した。そして量子ドットの中に電子が1個ずつ入る単一電子デバイス動作の実証と、 2つの量子ドット間の電子の結合をグラフェンゲート電極によって変化させることに成功し、 最も基本的な集積化ナノデバイスである結合量子ドット素子を実現した。
- 量子ドットは単電子素子や量子ビットの基本構造であり、 本研究によって新カーボン材料による集積化ナノデバイス開発の可能性が示されたことから、グラフェン材料を用いた単電子エレクトロニクスや、 量子コンピュータなどのいわゆるBeyond CMOSと呼ばれる新機能ナノエレクトロニクスのデバイス開発の進展につながると期待される。 本成果は米国の学術専門誌『Nano Letters』に近日中に掲載される予定である。