都市鉱石からコバルト、さらに金を回収することに成功

2010.03.02


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS元素戦略センターの原田 幸明 センター長らは、都市鉱石からレアメタルの一つであるコバルトを回収し、さらに残りの液から金が回収できることを確認した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝 以下、NIMS) 元素戦略センターの原田 幸明 センター長らは、都市鉱石からレアメタルの一つであるコバルトを回収し、さらに残りの液から金が回収できることを確認した。
  2. 都市鉱石からコバルトを回収するための武器となったのは“修飾HOM” (HOM:high-ordered mesoporous monolith)と呼ばれるメソポーラス酸化物である。
  3. NIMSのSherif El-Safty 主幹研究員は、新しいセンサー用の材料としてHOMを開発した。この物質の優れた分子認識能力を見た原田センター長は、ほんのわずかな量の物質を検出する能力があるのなら、更に精度を上げることにより、都市鉱山のコバルトを検出・回収できるのではないかと考えた。Sherif El-Safty主幹研究員はそれに従い、HOM に精妙な修飾を加えて修飾HOMを完成させ、これを用いることによりコバルトの回収に成功した。
  4. さらに、残りの液にも微量の貴金属等が含まれているため、そこから金を抽出することを考えた。金の抽出には独自の物質開発は不要であり、単純な溶解・析出反応で回収できることを確認した。
  5. ナノテクノロジーで注目を集めているメソポーラス物質の実用化への応用の尖兵となることが期待される。
  6. 本研究は平成20年度、21年度の補正予算に基づく経産省リサイクル推進課事業「レアメタル等高効率抽出・分離技術開発事業」からの受託研究の一部として行われたものである。
  7. また、この修飾HOMによる抽出の内容は、3月に物質・材料研究機構元素戦略センター主催、化学戦略機構共催で実施される「第一回 有機・ナノ・冶金融合の革新的レアメタル抽出技術研究会 公開ワークショップ」において、発表される予定である。

「プレス資料中の図5都市鉱石から取り出した粗金」の画像

プレス資料中の図5
都市鉱石から取り出した粗金



Sherif El-Safty 略歴

独立行政法人物質・材料研究機構 
環境・エネルギー材料萌芽ラボ 融合研究グループ 主幹研究員
1968年 エジプト生まれ。
1990年 タンタ大学 (エジプト) 理学部化学科卒
2000年 英国サザンプトン大学でPh.D取得
(この後、日本学術振興会ポスドクフェロー、同招聘教授などを経て現職。現在、タンタ大学の化学の教授も兼任。専門は、メソポーラス材料の合成と応用。)