従来より10倍以上も超高密度のデジタル情報を炭素分子の薄膜へ書き込み/書き変え/読み出しできる新方法を開発
究極のナノテクノロジ - から生まれた次世代情報素子の基幹技術
2010.03.04
独立行政法人物質・材料研究機構
国立大学法人大阪大学大学院工学研究科
NIMSのMANAと大阪大学大学院工学研究科精密科学専攻のグループは、C60分子間の化学結合を自在に制御する方法を発見し、記録媒体へ不揮発のデジタル情報を超高密度に蓄積する新技術の開発に成功した。
概要
独立行政法人物質・材料研究機構 [NIMS] (理事長 : 潮田 資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 [MANA] (拠点長 : 青野 正和) の中山 知信 グループリーダーと中谷 真人 NIMS研究員、大阪大学大学院工学研究科精密科学専攻の桑原 裕司 教授らのグループは、近年注目されている炭素原子からなるフラーレンと呼ばれる分子の一つであるC60分子の間の化学結合を分子スケールの局所において機能性分子間の化学反応を単分子スケールの精度で自在に制御する方法を発見し、それを基に、記録媒体へ不揮発のデジタル情報を超高密度に蓄積する新技術の開発に成功した。本研究成果は、今後、大容量で小型な次世代ストレージ素子を実現するための基幹技術へ発展する可能性を秘めている。
本研究グループは、新しい原理で駆動するエレクトロニクスの構築を目指して、C60分子間へ化学結合を形成した状態 (結合状態) と結合を解消した状態 (非結合状態) を自在に制御する方法を開発してきた。今回、フラーレンC60分子の超薄膜を記録媒体として利用し、現在実用化されている高密度情報蓄積技術に比べ約1,000倍、基礎研究レベルの技術で比較しても従来の10倍以上の超高密度デジタル情報を蓄積する方法を開発した。通常、C60分子は分子間力で凝集し固体結晶を構成しているが、高温・高圧条件下や電子線などの照射によって分子間に化学結合が形成されることが知られていた。このたびの情報蓄積法の開発は、分子薄膜中の意図したC60分子の結合/非結合状態を室温制御する新しい方法の発見と、その現象の機構を詳細に解明する基礎研究に基づいて行われた。
記録媒体であるC60超薄膜へ先鋭化させた金属針を接近させ、金属針直下のC60分子へ化学反応を誘起する研究を系統的に行ったところ、C60分子の結合状態と非結合状態を意図的に選択する方法を見出した。結合状態 (“1”) と非結合状態 (“0”) からデジタル情報を構成し、情報蓄積を行ったところ、既存のストレージ素子の約1,000倍の面密度でデジタル情報を記録、消去、再記録することに成功した。この蓄積情報は、室温下で良好な不揮発性を示す。さらに、“1”および“0”状態を簡便に読み出す方法を考案し、その実証にも成功した。研究グループは結合するC60分子の数の制御によって、”2”, “1”, “0”の多値記録にも成功した。
本研究グループは、新しい原理で駆動するエレクトロニクスの構築を目指して、C60分子間へ化学結合を形成した状態 (結合状態) と結合を解消した状態 (非結合状態) を自在に制御する方法を開発してきた。今回、フラーレンC60分子の超薄膜を記録媒体として利用し、現在実用化されている高密度情報蓄積技術に比べ約1,000倍、基礎研究レベルの技術で比較しても従来の10倍以上の超高密度デジタル情報を蓄積する方法を開発した。通常、C60分子は分子間力で凝集し固体結晶を構成しているが、高温・高圧条件下や電子線などの照射によって分子間に化学結合が形成されることが知られていた。このたびの情報蓄積法の開発は、分子薄膜中の意図したC60分子の結合/非結合状態を室温制御する新しい方法の発見と、その現象の機構を詳細に解明する基礎研究に基づいて行われた。
記録媒体であるC60超薄膜へ先鋭化させた金属針を接近させ、金属針直下のC60分子へ化学反応を誘起する研究を系統的に行ったところ、C60分子の結合状態と非結合状態を意図的に選択する方法を見出した。結合状態 (“1”) と非結合状態 (“0”) からデジタル情報を構成し、情報蓄積を行ったところ、既存のストレージ素子の約1,000倍の面密度でデジタル情報を記録、消去、再記録することに成功した。この蓄積情報は、室温下で良好な不揮発性を示す。さらに、“1”および“0”状態を簡便に読み出す方法を考案し、その実証にも成功した。研究グループは結合するC60分子の数の制御によって、”2”, “1”, “0”の多値記録にも成功した。