人工光合成の実現に大きく一歩前進 高活性光触媒材料を発見
可視光での量子収率およそ90%、リン酸銀の画期的な酸化特性を発見
2010.06.07
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS光触媒材料センターは、リン酸銀 (Ag3PO4) が可視光照射下で極めて高い酸化力を発揮する光触媒材料であることを発見した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 光触媒材料センター (センター長 : 葉 金花) は、リン酸銀 (Ag3PO4) が可視光照射下で極めて高い酸化力を発揮する光触媒材料であることを発見した。
- 光触媒材料センターは、リン酸銀の画期的な酸化特性を、水分解による酸素発生試験とメチレンブルーの分解試験により見いだした。
酸素発生試験では、他の可視光応答型光触媒の効率を遙かに凌ぎ、しかも,可視光照射下での量子収率は、およそ90%と驚異的な値を示した。同様に、メチレンブルー分解試験においても、光酸化性能が極めて高かった。 - 光触媒は水の光分解から水素を生成するため、化石燃料に代わるクリーンエネルギーの製造技術として注目されている。また、太陽光のみを利用した有害物質の分解・除去も可能だ。その機能は植物の光合成に類似していることから、人工光合成技術とも呼ばれている。
- 現在の代表的な光触媒である二酸化チタンは、紫外線反応のみで効率が悪いため、紫外線から可視光までを利用できる、光触媒材料 (可視光応答型光触媒) の研究開発が盛んに行われてきた。
- このリン酸銀を、有害化学物質の分解・除去に利用できるのみでなく、光電極システムの薄膜電極材として利用したり、あるいは適切な還元材料と組み合わせて利用したりすることで、水分解による水素製造や二酸化炭素の還元による燃料・資源の合成などへの応用も可能となる。人工光合成システムの実現に向けたターニングポイントとなることが期待される。
- 今回の研究成果は、日本時間6月7日 (月) 午前2時 (ロンドン現地時間6月6日18時) に、ネイチャー姉妹誌のNature Materials誌電子版に先行掲載される。