地上でもっとも薄く伝導性の高い集積回路実現へ
原子膜グラフェンを用いたロジック素子
2010.06.23
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMSは、地上に存在するもっとも薄く伝導性の高い薄膜 (原子膜) であるグラフェンを用いて集積電子回路の基本要素を試作し、動作検証に成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) は、地上に存在するもっとも薄く伝導性の高い薄膜 (原子膜) であるグラフェンを用いて集積電子回路の基本要素を試作し、動作検証に成功した。
- また、同回路の入力信号電圧に対する主力電圧の変化から得られる電圧ゲインは、従来のグラフェン素子研究によって報告されていた値(0.044程度が最大)より、大きな向上(7、約150倍)に成功した。
- 電子素子は微細化が進み、素子の最小加工寸法がいずれ10ナノメートル以下になると言われている。それと同時に、あまりに微細になると電流制御が従来の半導体材料では十分に満たすことができず、『微細化の限界』が議論されている。解決法のひとつとして、極薄の伝導チャネルを用いた電子素子が考えられており、その材料として、グラフェンの電気伝導が広く注目されていた。
- 本研究での素子形状の特徴は、電気伝導を変調するためのゲート電極の部分に、独自開発のゲート絶縁膜自己形成法を用いてナノメートルスケールの極薄絶縁膜を用いたことである。これによって、電界を極めて効率よくグラフェンに電圧を加えることができ、素子のスイッチング特性を従来に比べて格段に向上させることに成功した。同時に、このグラフェン素子を直列に1枚グラフェンの中に形成することで、インバータ動作における大きな電圧振幅を検証することに成功した。
- 従来、グラフェンはその基礎伝導性の高さに反して、ロジック素子としては課題が大きいと討論されていたが、この結果によりその問題が解決し、今後の研究発展への加速が期待できる。
- これらの成果は、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (MANA) の塚越一仁主任研究者および黎 松林(そんぐりん り)研究員らが、筑波大学大学院数理物質科学研究科物理学専攻、神田晶申准教授とともに行った研究によって得られた。
- 本研究は、6月2日 (現地時間) 付けの米国科学誌NanoLetters電子版に公開された。