1/50000mmの直径のシリコンナノワイヤ中で不純物の挙動を捕らえることに成功

次世代縦型トランジスタおよびナノワイヤ太陽電池材料の実現に向けて

2011.02.04


独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人科学技術振興機構
国立大学法人筑波大学

NIMSの国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (MANA) および筑波大学は、次世代半導体材料として注目されているシリコンナノワイヤにおいて、キャリア制御のために導入した不純物の状態を非破壊・非接触で検出することに成功し、その挙動を捕らえることに初めて成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝、以下NIMS) 、国立大学法人筑波大学 (学長 : 山田 信博) は、次世代半導体材料として注目されているシリコンナノワイヤ (直径20nm以下) において、キャリア制御のために導入した不純物の状態を非破壊・非接触で検出することに成功し、その挙動を捕らえることに初めて成功した。この成果は、NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の深田 直樹 独立研究者らのグループおよび筑波大学の村上 浩一 教授のグループによって得られた。
  2. 現在の半導体トランジスタ材料の主流はシリコンであり、性能向上のためにそのサイズが年々縮小化されている。しかしながら、リーク電流の増大、発熱の問題等により、集積化と性能向上の両立には限界が近づいている。その解決策として、1次元のナノワイヤ構造に注目が集まっている。
  3. 1次元構造のシリコンナノワイヤをトランジスタ材料として利用するためには、キャリア制御 (pn制御) のための不純物ドーピングが重要であり、ドープされた不純物の状態と挙動を如何にして調べるかが実用上重要な課題であった。最近では、ナノワイヤを利用した次世代高効率太陽電池材料の開発にも注目が集まっており、ナノ構造体中の不純物の状態・挙動の理解が急務であった。
  4. 我々は、独自に確立した半導体ナノ構造体中の不純物の状態評価法を利用することで、キャリア制御のために導入したドーパント不純物の挙動をシリコンナノワイヤにおいて初めて検出することに成功した。p型不純物のボロンとn型不純物のリンの挙動は全く異なり、ボロンは絶縁膜である酸化膜へ出やすいことを明らかにした。また、応力の利用で挙動を制御できることも示した。
  5. 今回明らかとなった不純物の挙動、特にボロンが絶縁膜側へ出やすいという現象は、表面の割合の高いナノワイヤを次世代トランジスタに採用する上で解決すべきものである。本研究では、ナノワイヤへの応力制御が1つの鍵を握ることも明らかにし、次世代トランジスタの実現へ一歩近づけたといえる。また、本評価手法は、太陽電池の評価手法としても期待できる。
  6. 本研究は、独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 個人型研究 (さきがけ) 「革新的次世代デバイスを目指す材料とプロセス」領域 (研究総括 : 佐藤 勝昭) における研究課題「縦型立体構造デバイス実現に向けた半導体ナノワイヤの開発」 (研究代表者 : 深田 直樹) の一環として行われた。なお、本研究成果は、NANO Letters誌 (アメリカ化学会発行) に近日中に掲載される予定である。

「プレス資料中の図1 : (a)シリコンナノワイヤ中の不純物の偏析挙動の様子と(b)ナノワイヤの縦型トランジスタおよび太陽電池への応用例」の画像

プレス資料中の図1 : (a)シリコンナノワイヤ中の不純物の偏析挙動の様子と(b)ナノワイヤの縦型トランジスタおよび太陽電池への応用例