ナノテク材料に画期的な合成法 安価な酸化チタンを高機能化
高機能な還元型チタン酸化物の高品質かつ均質なナノ粒子を世界で初めて合成人工光合成や貴金属代替材料の開発へ大きく前進
2011.07.06
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMSの国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (MANA) は、世界で初めて二酸化チタンのナノ構造を保持したまま、内部の結晶構造が異なる還元型) 酸化物へと変化させる合成に成功しました。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の冨中 悟史 研究員と辻本 吉廣 研究員は、世界で初めて二酸化チタン (TiO2) のナノ構造を保持したまま、内部の結晶構造が異なる還元型酸化物 (Ti2O3) へと変化させる合成に成功しました。
- チタンの還元型酸化物は、電子伝導性や可視光吸収などの魅力的な特性が知られており、ナノ構造を持たせることができれば太陽電池や燃料電池などの幅広い応用が期待できます。しかし、従来の合成法では高温での加熱が必要であり、ナノ構造を有する材料の合成は困難でした。
- そこで冨中らは、ルチル型二酸化チタンのナノ粒子を出発物質として、低温においても強い還元力を示す水素化カルシウム粉末とともに混合し、従来の還元温度 (800~1100℃) より格段に低い350℃での反応によって、出発原料の形体やサイズはそのまま維持したまま、還元型チタン酸化物へと変化させる還元手法を発明しました。
- この成果は、高機能かつ均質なナノ酸化物を製造する新たな手法を提供するものであり、燃料電池や太陽電池など幅広い分野での材料合成へと発展する革新的な成果と言えます。本成果は、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点および大型放射光施設SPring-8に設置されたNIMSビームステーション (BL15XU) と共同で行い、ドイツ化学会の国際誌「Angewante Chemie International Edition」に論文が掲載されます。