耐熱1000℃、高温・高速金属疲労試験装置の開発に成功

ジェットエンジン、発電用ガスタービンの安全性確保に大きく貢献

2011.07.13


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの材料信頼性評価ユニットは、ジェットエンジンやガスタービン内部に酷似させた高温かつ高速振動の環境下で、重要部品用材料の金属疲労の特性を評価できる高温超音波疲労試験技術の開発に成功しました。

概要

独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) の材料信頼性評価ユニット (ユニット長 : 木村 一弘) の古谷 佳之 主幹研究員らは、ジェットエンジンやガスタービン内部に酷似させた高温かつ高速振動の環境下で、重要部品用材料の金属疲労の特性を評価できる高温超音波疲労試験技術の開発に成功しました。

ジェットエンジンやガスタービン等のタービンブレードでは、共振により数千ヘルツの高速振動が発生し、振動による疲労では繰返し数がギガサイクル (109回=10億回) を超えます。ところが、従来の疲労試験は10ヘルツ (1秒間に10回、109回は3年) 程度の低速で実施され長期間の試験時間を要するため、材料の疲労特性評価は107回程度 (約1週間) までが限度でした。

それに対して本研究では、超音波振動を使い繰返し速度が20000ヘルツ (1秒間に2万回、109回は1日) という高速の疲労試験を実現できる超音波疲労試験技術を応用することを着想しました。この技術を用いることにより、ギガサイクル域までの材料の疲労特性を迅速に評価することができます。

超音波疲労試験は共振現象を利用した特殊な試験法であるため、温度の影響を受ける因子が非常に多く、全ての因子を特定して装置を追従させることが困難でした。それに対して本研究では、温度の影響を受ける因子を詳細に分析し、制御方法の見直し、部品の設計、センサー類の追加・改良を行いました。また、試行錯誤を行いながら装置の完成度を高めていく過程で、従来の研究では見過ごされてきた因子があることを見出し、その問題の修正に成功しました。その結果、市販品をベースとし、多くの特殊な改造が施された全く新しい装置を開発することができました。この装置では、1000℃という高温において高精度の超音波疲労試験を実現でき、高温で高速振動にさらされるジェットエンジンやガスタービンの使用環境に類似した疲労試験を行うことができます。

実証試験では、今回開発した装置による疲労試験結果は比較データ (数十年の長年にわたって蓄積された疲労試験結果) とよく一致しました。この結果は、開発した装置による試験結果の信頼性が高いことを示しています。このように、1000℃まで試験可能な高温用超音波疲労試験装置が開発され、試験結果の信頼性が確認されたことにより、ジェットエンジンやガスタービンの信頼性向上に貢献するとともに、高強度のタービンブレード用材料の開発研究を促進することが期待されます。

なお、本研究成果は日本機械学会 M&M2011材料力学カンファレンスにおいて7月18日に発表されます。

「プレス資料中の図1: ボイラー用の耐熱鋼を用いて650℃で行った試験結果。開発した装置による結果は比較データ (文献値) とよく一致している。」の画像

プレス資料中の図1:
ボイラー用の耐熱鋼を用いて650℃で行った試験結果。開発した装置による結果は比較データ (文献値) とよく一致している。