テレビ用ブラウン管ガラスの廃材に高い放射線遮蔽能力
地デジ化で大量廃棄が予想されるブラウン管テレビが原発事故対策に有効
2011.07.25
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMSの元素戦略材料センター 資源循環設計グループは、原子力発電保守管理・放射性物質関連業務の (株) ATOX社と協力して、家電リサイクルで集められた使用済テレビのブラウン管ガラスから得られるガラスカレット (ガラス破砕くず) が放射線の遮蔽に有効であることを確認した
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (潮田資勝理事長) の元素戦略材料センター (センター長 : 津崎兼彰) 資源循環設計グループ (原田 幸明グループリーダー) は、原子力発電保守管理・放射性物質関連業務の (株) ATOX (アトックス) 社 (社長 : 矢口 敏和) と協力して、家電リサイクルで集められた使用済テレビのブラウン管ガラスから得られるガラスカレット (ガラス破砕くず) が放射線の遮蔽に有効であることを確認した。
- 試験は照射試験実験室内で、0. 8ペタベクレル (ペタベクレル=1015ベクレル) のコバルト線源と、放射線の強さを測る線量計との間に、ブラウン管ガラスのカレットを置いて、放射線の遮蔽能力を測定した。カレットは厚みを変えて箱詰めし、ガラスカレットの厚さと空間線量率の減少から遮蔽能力を調べた。
- その結果、何も手を加えないブラウン管ガラス粉砕カレットでも、厚さ約 55cmで放射線を約 100分の1まで遮蔽する能力があることがわかった。これはおよそ 9cmの鉛の厚板の遮蔽能力に相当する能力である。また、粉砕時に生じるガラス粉 (ビリガラス) と粉砕カレットをブレンドして密度を上げると、約40cmの厚みで放射線を100分の1まで遮蔽する能力を発揮した。
- また、ビリガラス粉を重量で66%の配合でシリコン樹脂にねりこんだ材料は28.5 cmの厚さで、放射線を10分の 1に減らす遮蔽能力を持つこともわかった。これは鉛の厚板4.4cmに相当する遮蔽能力に相当する。
- これらの遮蔽能力は50cm厚のコンクリートにガラスカレットを半量配合できれば、コンクリートだけの場合と比べ放射線量を約半分にする減弱効果をもつ計算になる。
- これらの結果は、7月24日のアナログテレビ放送終了によって大量の使用済みブラウン管ガラスが発生するという予測を踏まえ、今年4月に未踏科学技術協会・エコマテリアルフォーラムより出されていた「使用済ブラウン管を原発事故対策へ」という提案の有効性を裏づけるものである。