原発からの放射性物質に使用する吸着材料データベースを整備

ゼオライトなど天然鉱物・無機物質を利用した除染に大きく貢献

2011.12.07


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS 環境再生材料ユニット ジオ機能材料グループは、様々な産地の天然鉱物、様々な化学組成を有した無機材料に対して、適材適所の物質・材料を絞り込みのための基礎データを収集し、データベースとして12月13日 (火) 10 : 00より公開する。

概要

東日本大震災による福島第一原子力発電所事故によって放出された放射性物質の除去・回収方法が模索されている。その中で、現在もっとも有力な方法として、ゼオライトをはじめとした天然鉱物を吸着材として用いることが検討されている。
実はこうした天然鉱物は、同じ物質名のものであっても産地や組成によって吸着能力に差があるほか、放射性物質の濃度や、使用する環境の酸性度などの条件によって性能が大きく変化する。つまり、どのような現場で使用するかによって有効な吸着物質が異なるため、各現場の状況に合わせた最適な吸着材を選ぶ必要がある。しかし、そうした数多くあげられた吸着材候補物質について、その吸着能力を網羅的に示したデータは世界的にも存在せず、吸着材を選ぶ際のデータベース作りの必要性が叫ばれていた。

物質・材料研究機構では、様々な産地の天然鉱物、様々な化学組成を有した無機材料に対して、適材適所の物質・材料を絞り込みのための基礎データを収集、データベースとして公開する。対象はセシウム、ストロンチウムおよびヨウ素の吸着材で、検討した吸着材料は、様々な産地・化学組成を有した候補材料約60種に対し基礎的データ800点近くを収集した。
放射性物質の放出により汚染された対象物は多岐に渡る。発電所内に溜まる炉心の冷却に使用された海水を含む汚染水や原発周辺および広域に汚染が拡大している土地 (田んぼ・畑・果樹園等) 、森林、水、建物、道路等が想定される。また、汚染された水の分布も、海水、河川水、ため池や湖、プール、農業用水等非常に多様である。こうした様々な現場での放射性物質の除去に対応すべく、多種にわたる吸着物質を多様な条件下で実験しデータ収集を行った。

データベース構築は (独) 物質・材料研究機構、ジオ機能材料グループの山田 裕久グループリーダーを中心として、北海道大学、岩手大学、東京工業大、島根大学、宮崎大学、首都大学東京、金沢工業大学、国際農林水産業研究センター、産業技術総合研究所、日本原子力研究開発機構、電力中央研究所の7大学・4独法・1財団法人が行った。これら研究チームは、日本粘土学会の主要なメンバーでもある。
本研究開発は、主として平成23年度科学技術戦略推進費「放射性物質による環境影響への対策基盤の確立」において実施されたものである。



12月13日 (火) 10 : 00 ~「物質・材料データベース (通称MatNavi) 」上で公開予定。

収集した膨大なデータについては、 (独) 物質・材料研究機構が提供しているデータベース「物質・材料データベース (通称MatNavi) 」の中に新たな枠組みを設け収録する。
データベースへのアクセスは、「物質・材料データベース (MatNavi) 」 http://mits.nims.go.jp/ より12月13日 (火) 10 : 00~可能となる。
また日本原子力学会等の学協会HPとリンクする予定である。