廃熱から電気を生み出す粒子の簡便な製造法を開発
エネルギーの無駄を激減させる廃熱発電が低コストで実現
2011.12.16
独立行政法人物質・材料研究機構
株式会社 ミツバ
NIMS 電池材料ユニットと株式会社ミツバは、自動車エンジン、工場の炉から排出される大量の熱を有効に利用して電気を作り出す廃熱発電。これをおこなう粒子を簡便で安価に製造する方法を開発した。
概要
- 自動車エンジン、工場の炉から排出される大量の熱を有効に利用して電気を作り出す廃熱発電。これをおこなう粒子を簡便で安価に製造する方法を開発した。この成果は独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝、以下NIMS) 電池材料ユニット (ユニット長 : 高田 和典) の磯田 幸宏主任研究員と株式会社ミツバ (代表取締役社長 : 阿久戸 庸夫、以下ミツバ) 研究部 (研究部長 : 長島 愼一) の塩田 直樹研究員との共同研究により得られた。
- 廃熱から電力を取り出す廃熱回収用熱電材料として注目されているのは、マグネシウムとシリコンからなる化合物 (Mg2Si) の粒子である。この粒子の製造法には従来2つの方法が一般的に用いられてきた。1つは原料を直接溶解して得られる化合物のインゴットを粉砕する「溶解合成法」。もう1つは、原料粉末と鋼製ボールをポットに入れ、高速で回転させて製造する「メカニカルアロイング法」である。しかし「溶解合成法」ではMgの沸点 (1090℃) とMg2Siの融点 (1085℃) が近いためにMgの蒸発による組成ずれ、粉砕工程での不純物の混入、酸化などが生じる問題があった。また「メカニカルアロイング法」では原料にMg粉末を使用するので粉塵爆発の危険があり、さらにポットやボールからの不純物の混入、得られる粒子径が小さいなどの問題があった。
- 今回成功した製造法ではMg塊とSi粉末をカーボンボードに入れ、電気炉中でMgだけが溶ける温度で加熱するだけでMg2Si化合物粒子を簡便に合成できる。大型設備を必要とせず、粉砕工程も必要ないために従来法での問題点をすべて解消でき、製造コストを大幅に下げることが出来る。また、合成する粒子の大きさも、原料のSi粉末粒径を変えるだけで、自在に調整できる。
- Mg2Si化合物粒子を焼結して作った今回の粒子は、焼却炉や溶鉱炉、溶解炉などの工業炉や、自動車など、従来捨てられていた廃熱から電力を生み出す「廃熱発電」を可能にするが、この製造法により現行の3分の1以下の値段でこの粒子を供給できると考えられ、さらに量産化技術の開発でそれ以上の低価格化を今後目指す予定である。
- 本成果は、2011年12月19日から横浜で開催される第21回日本MRS学術シンポジウムのセッションT、エネルギー材料・フロンティアで発表する。 (発表日12月20日)