新たな高機能性材料メソポーラス・プルシアンブルーの合成に成功

表面積の増大によるセシウム吸着性能の向上

2011.12.19


独立行政法人 物質・材料研究機構
独立行政法人 科学技術振興機構

NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点は、無数のナノ細孔 (メソポーラス) をプルシアンブルーの結晶構造体中に形成させることに成功した。

概要

  1. 独立行政法人 物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝、以下NIMS) は、無数のナノ細孔 (メソポーラス) をプルシアンブルーの結晶構造体中に形成させることに成功した。この研究成果は、NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の山内 悠輔 独立研究者、Hu Ming 博士研究員らによって得られた。
  2. プルシアンブルーは、ゼオライトなどの天然鉱物とならび高いセシウム吸着能を有している。これまで、プルシアンブルーの吸着能向上のために、微細化・メソポーラス化することで表面積を大きくすることが試みられてきた。しかし、従来のメソポーラス材料の合成法では、微細化することによってプルシアンブルーの結晶性が大幅に低下し、期待するほど表面積は向上しなかった。そのため、結晶性を維持しつつプルシアンブルーの表面積を向上し、吸着性能を最大限に発揮するための新しい合成法の開発が不可欠であった。
  3. 本研究では、エッチングを使った新合成法を用いて、プルシアンブルーのナノ粒子を分散させた溶液に水溶性高分子を加え、酸性条件で攪拌することにより、自発的に無数のナノ細孔を粒子中に形成させることができた。その結果、表面積は1gあたり330m2以上の高い値を示し、今までに報告されているすべてのプルシアンブルーの中で最も大きい表面積を達成した。これは、市販のプルシアンブルー粒子と比較すると10倍以上の表面積である。そのメソポーラスプルシアンブルーを用いて、セシウム吸着実験を行ったところ、市販のプルシアンブルーに比べて8倍以上のセシウムを吸着することに成功した。この吸着能は海水中でも同様の効果が期待できると考えられる。また、プルシアンブルーは金属置換によってセシウム吸着能をさらに向上するため、現在、本手法のCo-Feプルシアンブルー類似体などへの適用を試みている。今後、これら材料の吸着材としての試験を進め、プロセスを簡略にすることで、量産化への対応をはじめ、実用に近付く展開が期待される。
  4. 本研究成果はJST 戦略的創造研究推進事業 個人型研究 (さきがけ) 「ナノシステムと機能創発」研究領域 (研究総括 : 長田 義仁、理化学研究所 基幹研究所 グループディレクター) における研究課題「次世代磁気記録媒体に向けたナノ構造制御システムの構築」 (研究者 : 山内 悠輔) 、およびNIMSの「次世代環境再生材料の研究開発」プロジェクトの一環として得られた。なお、本成果はAngewandte Chemie International Edition誌 (ドイツ化学会発行) オンライン版に12月19日 (現地時間) に掲載される予定である。

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プレス資料中の図1.エッチングを利用した新しいナノポーラス材料の合成法