超伝導にとって「3」は特別の意味を持っていた

3つ以上の成分からなる多成分超伝導で起きる新規物性現象の解明

2012.05.22


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点は、多成分超伝導で起きる新規現象を解明した。

概要

独立行政法人 物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) WPI国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の古月 暁主任研究者らのグループは、多成分超伝導で起きる新規現象を解明した。多成分超伝導とは、MgB2や鉄系超伝導体のように、化合物の中で異なる電子軌道にある電子が同時に超伝導状態になる現象であり、室温超伝導を実現させるカギと考えられている。
今回研究グループは電子クーロン相互作用が原因で互いに斥力が働く3成分を持つ超伝導体に注目した。成分間競合により、3成分の超伝導位相が互いにずれたフラストレーション超伝導状態が生じる。その結果、相対位相の振動がソフト化し、位相振動のLeggettモードと呼ばれる集団励起のエネルギーがゼロになり、超伝導体の中で減衰することなく安定に存在することが理論的に示された。また、鉄系超伝導体の低温電子比熱の実験結果はゼロエネルギーLeggettモードによってよく説明できることも判明した。Leggettモードは超伝導の唯一のゼロエネルギー集団励起と考えられ、その解明は超伝導現象の本質を理解する上で重要な意味を持つ。また、位相フラストレーション超伝導状態は高精度SQUIDや量子ビット等の超伝導量子デバイスに役立つと期待されている。
なお、本研究成果は米国物理学会の論文誌Physical Review Letters (電子版) で発表された。

「プレス資料中の図1 : 斥力を及ぼす3成分超伝導ではそれぞれの成分が拮抗して、3成分の位相がそれぞれずれているフラストレーション状態が生まれる。位相差の時計周りと反時計周りの二つケースがあり、エネルギーが同じ双子である。」の画像

プレス資料中の図1 : 斥力を及ぼす3成分超伝導ではそれぞれの成分が拮抗して、3成分の位相がそれぞれずれているフラストレーション状態が生まれる。位相差の時計周りと反時計周りの二つケースがあり、エネルギーが同じ双子である。